■要旨 安倍政権発足からほぼ一貫して円安基調が続いてきたが、中国経済の減速懸念や米国の追加利上げ観測の後退などから、2016年に入り円高が大きく進行した。急激な円高によって日本経済はこれまでと大きく様相が変わる可能性がある。 円安は企業収益の改善と物価上昇に大きく寄与してきた。過去3年間で経常利益は約40%、消費者物価は約2%(消費増税の影響を除く)上昇したが、当研究所のマクロモデルによれば、そのうち経常利益の4割弱、消費者物価の7割弱が円安によるものだったと試算される。 海外経済の減速や円安の一巡などから製造業の経常利益はすでに減少に転じている。今後は訪日外国人急増の恩恵を受けてきた旅行、宿泊、小売業などの非製造業にも円高の悪影響が及ぶ可能性がある。 現状の為替レート(1ドル=109円程度)が続いた場合の経常利益、消費者物価への影響を試算すると、経常利益は2016年4-6月期から、消費者
次期首相の最有力候補である安倍晋三総裁が15日に都内で行った公演で、大幅な金融緩和策を実行していくと主張した。その内容は、無制限の量的緩和、インフレ・ターゲット、国債の日銀直接引き受けなど、いわゆる日本のリフレ派の政策そのものであった。このような非常にアグレッシブなインフレ政策の発言を受けて、円は売られ、大きく円安方向に進んだ。市場の反応が大きく、さらに様々な有識者から批難にさらされた結果、安倍氏は、今日になってその発言のいくつかを取り消している。 このような安倍氏の発言の背景には、デフレが続くこと、その結果としての円高が日本経済を逼迫しているとの認識がある。デフレとは、モノやサービスの価格が下がること、逆に言えば貨幣の価値が上がることだから、貨幣の流通量を増やせば解決すると考えている。よって、日銀の金融緩和策が十分ではないからデフレも円高も是正されないのであり、日銀にさらなる政治的圧力を
[東京 3日] - ここ数カ月、筆者が強調しているのは、経済が完全雇用に近づいているため、極端に景気刺激的になっているマクロ安定化政策を早く方向転換せよ、という点である。 日本経済の成長ペースが鈍ってきたのは、消費増税の影響もあるが、それだけではない。経済のスラック(弛み)が解消された現在、ゼロ近傍まで低下した潜在成長率を大きく超える成長の継続自体が難しくなっている。総需要や総需要刺激策の不足ではなく、経済の実力である潜在成長率が低いことが低成長の主因である。 現に、実質ベースで超円安となり、海外経済が回復局面にあるにもかかわらず、実質輸出は全く増えていない。円安は輸入物価上昇をもたらし、家計の実質購買力を抑制し、個人消費の足を引っ張るだけとなっている。マネタリーベースの目標達成のため、日銀がマイナスの実効金利で短期国債を買わざるを得なくなっていることも、さらなる円安を助長しており、量的・
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6月12日、JPモルガン・チェース銀行の佐々木融・債券為替調査部長は、円高進行の背景には、日本の債券・株式市場の不安定化とドル安もあるが、もっとも警戒すべきは新興国市場の不安定化だと指摘。提供写真(2013年 ロイター)
かと ゆたか/1953年生れ。78年3月神戸大学大学院経営学研究科博士課程前期課程修了、86年4月大阪府立大学経済学部助教授、94年1月神戸大学経営学部教授、99年4月神戸大学大学院経営学研究科教授、2008年4月~10年3月経営学研究科長・経営学部長。『インサイト管理会計』『インサイト原価計算』『ケースブック コストマネジメント(第二版)』『管理会計入門』など著書多数。 円高は、大企業だけでなく、その底辺を支える中小企業にも大きな影を投げかけている。この状況が続けば、わが国産業の基盤が崩壊する危機はさらに深刻なものとなるだろう。 直面する危機を乗り越えるための方策は、多くが指摘するように積極的なM&Aを通じた企業業績の回復と、海外進出による原価・費用低減が主要なものである。しかし、M&Aの推進や海外に進出するという行動自体には戦略性はない。経営戦略には驚きがないといけないとすれば、だれも
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