かつて40年の長きにわたる高度成長を遂げた日本経済がここ四半世紀、ほとんど成長していない。経済規模を示す国内総生産(GDP)は、1997年から2015年にかけてわずか12%(物価変動調整後)しか拡大しておらず、年平均成長率は0.6%にとどまっている。こうした状況は「長期停滞(secular stagnation)」と呼ばれる。この表現は、1930年代後半にハーバード大学のアルヴィン・ハンセン教授が「長期停滞論」を唱えたことをきっかけに広く用いられるようになったが、近年、同じくハーバード大学のローレンス・サマーズ教授らが使い始めたことで再び注目されるようになった(Summers 2016)。サマーズ教授らが問いかけているのは、日本のみならず、欧州、さらには世界全体で長期停滞が起きているのではないかということである。 長期停滞は2つの全く異なる(しかし矛盾しない)要因によってもたらされる。1つ