「ボールは友達」と言わんばかりに自由自在に操る大野忍=神戸市灘区で2011年10月11日、小松雄介撮影 ◇「そんなにすごくないよ」 日本女子サッカーリーグ(なでしこリーグ)のINAC神戸に所属する大野忍(27)は10月のある日、神戸市内でつかの間のオフを楽しんでいた。チームメートと買い物をしていると、ささやき声が耳に届いた。「あの人絶対、なでしこの選手だよね」。近くにいた若い女性らが駆け寄ってきて「握手してくださーい」。 7月のワールドカップ(W杯)ドイツ大会で日本が優勝して以来、代表の一人だった大野の生活は激変した。テレビのCMやバラエティー番組の出演。どこへ行ってもファンから声を掛けられる。まさに「なでしこブーム」だが、本人はいたって冷静だ。「自分たち、そんなにすごくないんですよ」 18年前にさかのぼる。93年5月、当時9歳の大野は家族に連れられて東京・国立競技場の観客席にいた。Jリー