■自伝的なカルト体験記 現代思想分野における著者の最近の活躍は目覚ましい。著者が統一教会の元信者であることを明言してきたことはその存在を神秘化するとともに、なぜ信者だったのかという疑問を読者に抱かせてきた。本書は、11年にわたる信者としての日々を回想した、自伝的なカルト体験記である。 周囲と折り合いをつけることがうまくできない著者は、東大に入学したものの、その環境にもなじめず、それが入信のきっかけになる。かといって、統一教会の学生組織である原理研の活動にも適応できず、世間の評判が悪い珍味売りさえこなせない。大学の方も理系で入学したはずなのに、勉強についていけず、教育学部に転じなければならなかった。生き生きするのは、民青や新左翼などと暴力的に衝突するときで、いわゆる合同結婚式で教祖に相手を指名されても、結婚に至れない。 その意味で、著者は、社会とカルトからの二重の落ちこぼれだ。その点について