お洒落に無頓着で、変じゃなければ良い、程度の感覚で服は選んでいるが、それでもお気に入りの一着くらいはある。 数か月後に大学受験を控えた高三の冬にお姉ちゃんがくれたセーターがそれで、薄い紫色の太い毛糸で編んだハンドメイドの輸入もので、着てみせたらよく似合ってるとお姉ちゃんは言ってくれた。 冬がくるたび、わたしはそのセーターを引っぱり出してきて、かなりの頻度で着用し、春がきてしばらくしてもまだしつこくそれを着ていた。 はじめてのデートのときも、はじめての海外旅行のときも、はじめての鍾乳洞長期潜伏期間中も、いつもそのお気に入りのセーターだった。 ところがそうやって後先考えずに着倒してきたせいで、今、セーターの状態がひどいことになってる。とにかく、毛玉がすごい。小さな毛玉がセーターの表面をびっしりと覆い尽くしている。 このまま毛玉が増え続けたら、大切なお気に入りのセーターはどうなってしまうのだろう