前回、インド社会に深く根づいているカースト制度は、現状肯定的、社会制度維持的な方向性を色濃く持っていると書いた。もっとも、カースト制度がインド社会に深く根づいていると言っても、カーストが人々の意識のなかに占める位置は、都市と農村では大きく違う。ニューデリーやムンバイ、コルカタなど大都市では、何かの特別な機会がなければ、自分が付き合っている人がどのカーストの出身かを知らないで過ごすケースが多いようだ。私がニューデリーでインタビューしたインドの学生たちも、「都会では普通、相手のカーストなど知らなくても過ごせるし、実際に知らない」と述べた。日本もそうだったように、都会は田舎のしがらみをしばしば隠してくれる。 ただし、インドに詳しい人によれば、カースト意識の希薄化は進んでいるものの、姓があるかないかや、あっても特徴的な名前であったりすると、その人がどのクラスの人かは漠然とわかるという。長い歴史から