誇り 仕事<3>助産師 黒子に徹し、つなぐ命 山田美也子さん(52) ドン・ドン・ドン・ドン…。エコーを通して、力強い音が聞こえてくる。 「元気だね」。優しいまなざしをおなかの方に向け、妊婦にほほ笑みかける。 三十歳の時、友人が助産師の助けで出産した。「心に寄り添ってくれる温かいお産で、すごくよかった」と話す幸せそうな友人の顔を見て、十一年間勤めた製薬会社を辞め、助産師の道に足を踏み入れる決意を固めた。 最初は大学病院に勤務。 しかし、四年目に入ったころから後輩の指導などで多忙になり、めったに妊婦のそばにいけない立場になってしまった。 「もっと妊婦に寄り添いたい」 当初抱いていたイメージとはあまりに違う病院での仕事に違和感を覚え、一九九九年に独立。 妊婦の自宅での出産を助けるようになった。 個々の希望にできるだけ応えてあげられるのが、自宅での出産のメリットだ。例えば、父親だ