老舗出版社の岩波書店は今月、学術的なテーマを専門家が一般読者向けに書く単行本シリーズ「岩波現代全書」の刊行を始めた。近年、類似した位置づけの「選書」創刊が、人文書系の出版社で相次いでいる。なぜ今、選書なのだろうか。(磨井慎吾) ◇ 出版界ではここ数年、毎年のように選書が創刊されている。平成21年に河出書房新社が「河出ブックス」を、22年に筑摩書房が「筑摩選書」、23年には中央公論新社が「中公選書」をそれぞれ創刊した。 各社の選書は、人文・社会科学を中心に幅広い分野のラインアップをそろえる。判型は大半が四六(しろく)判(縦約19センチ)に近いサイズで、社ごとに統一されたソフトカバー装丁が多い。 ◆得意な分野を反映 中公選書の横手拓治編集長(53)は「長編教養書としての選書を出せる出版社はある程度限られる」と語る。新書に比べて専門的な内容を多岐にわたって展開