昨年3月11日に起きた東日本大震災の後、作家の池澤夏樹さんは『楽しい終末』という本を電子書籍として復刊した。人類が手にした核をはじめとするテクノロジーは、私達をどこへ連れて行くのか。「楽しい」という語と「終末」という語の組み合わせに少し戸惑ったが、私はこの本を読んで池澤さんに話を伺いたいと思った。たんなる旧著の復刻にとどまらず、この本を震災後のいまこそ読者に届けたい、という「出版」への志を感じたからだ。 ご多忙のなか、昨年のうちに快く取材に応じていただいたにもかかわらず、編集に手間取り、掲載時期がかなり遅れてしまったが、あの震災から一年という節目に、あらためてこの本が多くの方に読まれることを期待して、池澤さんへのインタビュー記事をお届けする。(インタビュー・構成:仲俣暁生) 「これなら読める」 ――まず、『楽しい終末』を電子書籍化することになった経緯からお聞かせください。 池澤 非常に俗な