大学で経済学を教える場合、マクロ経済学とミクロ経済学に分けることが多い。マクロ経済学とは、個々の人や企業を合算・集計した一国経済全体を扱う経済学だ。その対象は、国民所得、失業率、インフレ率などだ。一方、ミクロ経済学とは、個々の人や企業が行う経済取引を行う市場を分析するものだ。需要と供給、競争などを勉強する。 ミクロ経済学の基礎にあるのは、個々の人や企業が「より良くなろう」という気持ちであり、自分に置き換えて考えられるので、比較的理解しやすい。ところが、マクロ経済学は、その基礎になる考え方がはっきりしない。個々の人にとって倹約するのは正しいとしても、全部の人が倹約し出すと不況になってしまうとかいう奇妙な話(これは、合成の誤謬〈ごびゅう〉というもの)をすると、ますます混乱してしまう。経済学の用語が輸入物であるので、しっくりこないというのもあって、学生は得心できない。そのときの不完全燃焼からな