グレゴリオ聖歌は、現在残されているヨーロッパ音楽の中で、再現することが可能な最古の音楽だといわれます。ローマ・カトリック教会の典礼(礼拝)のための音楽ですが、中世から現在にかけて歌い継がれてきたものですから、ヨーロッパ音楽の源流といって差し支えないのではないかと思います。 中世、ルネッサンス期、ゴシック期の作曲家はいうに及ばず、ベルリオーズの「幻想交響曲」やレスピーギの「ローマの松」にも、グレゴリオ聖歌の旋律が借用されています。現代作曲家の作品の中でも、グレゴリオ聖歌をもとにしたものが散見されます(デュリュフレの「レクイエム」などは最たるものですが)。 ハーモニーなし、旋律線はひとつだけ、尚かつ、斉唱(ユニゾン:全員が同じ音や旋律を奏する)で歌われる単純きわまりない曲ですが、聴いていると、力強く訴えるような迫力に満ちており、聴けば聴くほど、音の中に耽溺して酩酊状態に陥ることがあるくらい、不