この本は先の戦争の戦史を軸に「『兵士の目線』で『兵士の立ち位置』から戦場をとらえ直してみる」論考で、現場を詳細に、具体的に調べ、記している。注目したのは、日本人戦没者は1944年以降の戦争末期が推計で約9割に及ぶこと、戦闘による戦死よりも餓死やこれと関連する戦病死が極めて多かったことである。この8月、改めてこの本を開き、亡き父の言葉を思い出した。 有名な『失敗の本質』では日本軍の組織に敗因を探っていたが、ここでは敗戦の要因として軍事医療や兵站が不十分極まりない態勢で戦争に臨んだことを指摘している。しかも米英の技術は日本よりはるかに優れ、兵器や通信、土木、車両などが戦場で大きな差となった。 補給路が寸断され、食糧不足から多数の餓死者を出す。一例としてインパール作戦を挙げていたが、私の叔父もここで戦死した。兵士が「最後まで離さなかった物は飯盒である」の記述が強く胸に残る。 さらに粗悪な軍服や軍
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