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ブックマーク / saebou.hatenablog.com (62)

  • 2023年映画ベスト10 - Commentarius Saevus

    昨日のTBSラジオ『アフター6ジャンクション2』ポッドキャスト版で放送した、今年の映画ベスト10です。年は205映画を見ました。 『ベネデッタ』 『ロスト・キング 500年越しの運命』(パンフレットにレビューを掲載したのでブログにレビューなし) 『ゼイ・クローン・タイローン/俺たちクローン』 『ボーンズ アンド オール』 『ニモーナ』 『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』 『オマージュ』 『バーナデット ママは行方不明』 『フローラとマックス』 『ブラックベリー』 今年は映画視聴状況が劇的に変わりまして、4月から『芸術新潮』の映画評連載を始めたところ、とんでもない数の試写状が来るようになり、来る試写は基的に全て見るようにしたので(見なかったのは3程度のはず)、鑑賞するだけでものすごく多忙になりました。205中、試写で見たのが78(8割くらいはオンライン試写)、配信が37でし

    2023年映画ベスト10 - Commentarius Saevus
  • あなたを好きになってくれた人は全員、いなくなる~『別れる決心』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus

    パク・チャヌク監督の新作『別れる決心』を見た。 www.youtube.com 仕事の都合でと別居状態のチャン・ヘジュン(パク・ヘイル)は、山の上から滑落したと思われる男性の死を捜査することになる。中国から移民してきた若いソン・ソレ(タン・ウェイ)が怪しいが、ヘジュンはだんだんソレに対して捜査対象以上の興味を抱き始めるようになる。事件は自殺だろうということで一端、決着がついたように見えたが… 『めまい』+『は告白する』みたいなスリラーで(明らかにスタッフは両作を参考にしている)、極めてちゃんとした魅力的なファム・ファタルが出てくるノワールでもある。いろいろと現代風なアップデートもあり、ほぼ問題なく韓国語で込み入った話もできそうに見えるソレが、一番言いたいことについては中国語を吹き込んで機械翻訳してもらうとか、その翻訳の微妙なニュアンスの差がソレとヘジュンの関係に影響を及ぼすとか、翻訳

    あなたを好きになってくれた人は全員、いなくなる~『別れる決心』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus
    vialavida
    vialavida 2023/02/23
    カンヌでのインタビューを見たら主演のタン・ウェイ自身が「ファム・ファタール」という言葉をそもそも知らなくて、これも何かを示唆してると思う。
  • 2022年映画ベスト10 - Commentarius Saevus

    昨日、アトロクで発表した映画ベスト10です(伊賀大介さんのベストとあわせてこちらとこちらで聴くことができます)。今年は133映画を見ました。そのうち27は配信で、1は日未公開(ソフトで鑑賞)です。 1. 『メタモルフォーゼの縁側』…ポジティブなファン活動の楽しさに、世代の違う女性の交流を丁寧に織り込んだ作品。 2. 『私ときどきレッサーパンダ』…こちらもポジティブなファン活動についての作品。赤いレッサーパンダが何を象徴しているのか考えるのも面白い(たぶん月経じゃない)。 3. 『サポート・ザ・ガールズ』…かなり深刻な話なのに、コメディみたいな構造であんまりじめじめしていないのが面白い。 4. 『ミセス・ハリス、パリへ行く』…原作より良かった…というか、子どもの頃に読んで納得できなかったバッドエンドがやっと解決された気分になった。 5. 『ファイアー・アイランド』…『高慢と偏見』を

    2022年映画ベスト10 - Commentarius Saevus
  • 2021年映画ランキング - Commentarius Saevus

    昨日、出演した『アフター6ジャンクション』の放課後ポッドキャストで発表した今年の映画ベスト10です。今年はわりと映画なのか舞台なのか判断が微妙なもの(グリーンバックで役者を別々に撮って合成した「舞台」とか)を見たため、確実に「〇映画を見ました」と計算しにくいのですが、とりあえず確実に映画と判断できるものは100をちょっと超えるくらいは見ています。 1.『フリー・ガイ』 2.『パーム・スプリングス』 3.『パワー・オブ・ザ・ドッグ』 4.『あのこは貴族』 5.『ロマンティック・コメディ』 6.『ビーチ・バム まじめに不真面目』 7.『DUNE/デューン 砂の惑星』 8.『KCIA 南山の部長たち』 9.『モロッコ、彼女たちの朝』 10. 『天国にちがいない』 なお、ワーストは『ラストナイト・イン・ソーホー』、ベスト10に入れるかどうか迷ったのは『EMMA エマ』です。 ↓放送はこちらで聞

    2021年映画ランキング - Commentarius Saevus
  • 本年度のイギリス文学史のクラスは動画にします - Commentarius Saevus

    年度のイギリス文学史のクラスは、オンライン授業が続くかぎりは動画のオンデマンド配信とします。最初の1回分をYouTubeにアップしました。 www.youtube.com www.youtube.com

    本年度のイギリス文学史のクラスは動画にします - Commentarius Saevus
  • あのこは実は貴族じゃない~『あのこは貴族』 - Commentarius Saevus

    『あのこは貴族』を見た。www.youtube.com 東京の松濤で育った榛原華子(門脇麦)と、地方で育って東京に出てきた時岡美紀(水原希子)の暮らしがひょんなところで交錯するさまを描いた作品である。美紀は勉強して慶應義塾大学に合格するが、親の仕事がなくなったため学費が払えず中退し、水商売などで少しずつキャリアアップを目指す。華子は大金持ちの息子である青木幸一郎(高良健吾)と婚約するが、幸一郎は昔、慶應義塾大学で知り合いだった美紀と会っていたことがわかる。 最近の日映画の中では、階級とか地方格差を上のほうまで含めてものすごくちゃんと描いた作品である。貧しいほうを描くということであれば最近もうまくやっていたものはあるし、昔は上のほうの階級をちゃんと描いた作品というのもあったと思うのだが、この映画は現在の日の視点で細かい階級格差と地方格差を丁寧かつリアルに描いている。さらに上の階級の中での

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  • これはキム・ジヨンが書いた物語じゃない~『82年生まれ、キム・ジヨン』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus

    『82年生まれ、キム・ジヨン』を見た。チョ・ナムジュの原作小説を読んでとても面白いと思い、楽しみにしていた映画である。 82年生まれ、キム・ジヨン 作者:チョ・ナムジュ 発売日: 2019/02/13 メディア: Kindle版 タイトルロールのキム・ジヨン(チョン・ユミ)はかつては広告会社で働いていたが、今は仕事を辞め幼い娘を育てている。ハンサムで優しそうな夫デヒョン(コン・ユ)もいて傍目には幸せそうだが、子育てや夫の実家との付き合いなど、ストレスも多い。そんな中、ジヨンは時として別人が憑依したかのような奇妙な行動をとるようになる。 原作は一種の叙述トリックみたいなものを使ったミステリアスかつダークな話で、えらくリアルな話なのに読後感がなんかディストピアSFかダークファンタジーみたいな雰囲気だ。しかしながらこの映画はあんまりそういうスリリングな雰囲気がなく、ストレートな家庭劇っぽい演出を

    これはキム・ジヨンが書いた物語じゃない~『82年生まれ、キム・ジヨン』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus
    vialavida
    vialavida 2020/10/15
    映画で済ますかと思ってたけどやはり原作読んだ方がいいか。
  • 記者がヒーローじゃない新聞映画〜『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus

    スピルバーグの新作『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』を見てきた。 1966年、ペンタゴン・ペーパーズと呼ばれる機密文書が流出し、『ニューヨーク・タイムズ』によるスクープ報道がなされた。ライバル紙ではあるがかなり弱小である『ワシントン・ポスト』もこのペンタゴン・ペーパーズを入手して報道を準備するが、『ニューヨーク・タイムズ』の報道が差止命令を受けたという報が入る。このまま報道を行うと、株式が公開されたばかりの『ワシントン・ポスト』が国から訴えられ、つぶれるような事態になりかねない。社主のキャサリン(メリル・ストリープ)は悩んだ末、報道して戦う道を選ぶ。 地味な歴史映画だが、ジャーナリズムの映画なのにヒーローが記者ではなく、それでもちゃんとまともな映画になっているところが凄い。もちろん、編集主幹のベン(トム・ハンクス)や記者のバグディキアン(ボブ・オーデンカーク)なども活躍はするのだが、

    記者がヒーローじゃない新聞映画〜『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus
    vialavida
    vialavida 2020/08/01
    DVDで観たがとてもいい映画だった。序盤の説明台詞がやや気になるも終盤にカタルシスがあった。報道の自由と、組織のトップとしての女性のあり方について考えさせられ、確かに既成の枠に染まらないが故の強みを感じた
  • とんでもなく深刻な悲劇~新国立劇場『トゥーランドット』(配信) - Commentarius Saevus

    新国立劇場の配信『トゥーランドット』を見た。アレックス・オリエ演出のものである。この演目は初めて見た。 www.nntt.jac.go.jp 舞台は中国…なのだが、セットデザインは斜めに配置した階段をたくさん使ったモダンなもので、社会主義下の東欧とか、『メトロポリス』なんかに出てくるようなちょっとレトロな近未来を思わせるようなものである。衣類については、貴人たちはちょっとだけ中国風な白い衣装を着ているのだが、女性陣は修道女がかぶるみたいな大きな頭巾をかぶっているし、カラフ王子(テオドール・イリンカイ)はロシアあたりの寒い地方から着たような厚着だ。このへんのオリエンタリズムを排した美術はいいと思う。 全体的にとても重い演出だが、ピン、ポン、パンが出てくるところなどでは笑いもあるし、歌も安定感があって、大変面白かった。来は冷たいトゥーランドットが求婚者たちに難しい謎かけをし、答えられないと処

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  • 心にマギーを抱えた女~『スキャンダル』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus

    『スキャンダル』を見てきた。実際にFOXニュースで起こったセクシュアルハラスメント告発事件を題材にした作品である。 www.youtube.com FOXニュースのCEOであるロジャー・エイルズ(ジョン・リスゴー)はから性的嫌がらせを受け続けていたキャスターのグレッチェン・カールソン(ニコール・キッドマン)は、クビを機に反撃に転じ、集めておいた証拠を用いてロジャーを訴えることにする。トップキャスターであるメーガン・ケリー(シャーリーズ・セロン)はかつてロジャーからセクハラを受けたことがあり、ロジャー告発を助けるかどうか悩む。一方、新入社員のケイラ・ポスピシル(マーゴ・ロビー)はロジャーのセクハラのターゲットになり、悩んでいたが… 実話ベースで、複数名の証言をもとに作られたケイラは架空だが、グレッチェンやメーガンは現役の報道人で、かなり実際の人物に似せており、とくにセロン演じるメーガンは実際

    心にマギーを抱えた女~『スキャンダル』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus
  • 「ストラットフォードのシェイクスピアの伝記映画」が作られる意味~『シェイクスピアの庭』(ネタバレ注意) - Commentarius Saevus

    試写会で『シェイクスピアの庭』を見てきた。ケネス・ブラナーとジュディ・デンチが晩年のシェイクスピア夫を演じるという作品である。 www.youtube.com 話は1613年、『ヘンリー八世』の上演中にグローブ座が燃える事件から始まる。ウィリアム・シェイクスピア(ケネス・ブラナー)はこれを機に引退してストラトフォード・アポン・エイヴォンの故郷に帰ることにする。久しぶりにのアン(ジュディ・デンチ)と同居することになり、亡き息子ハムネットを記念する庭を造ることにするが、長くひとりでロンドンに住んでいたウィリアムはなかなか家族とうまくいかない。 晩年のシェイクスピア夫をじっくり描いた作品で、以前から一緒に仕事をしているブラナーやデンチの演技は申し分ないし、風景なども綺麗で、地味だが味わい深い文芸歴史映画だ。ウィリアムのパトロンであるサウサンプトン伯(イアン・マッケラン)がおじいさんになって

    「ストラットフォードのシェイクスピアの伝記映画」が作られる意味~『シェイクスピアの庭』(ネタバレ注意) - Commentarius Saevus
  • 「絆」ってこれだよね~『パラサイト 半地下の家族』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus

    ポン・ジュノ監督『パラサイト 半地下の家族』を見てきた。 www.youtube.com 公開中なのであまりネタバレしないように設定だけ書くと、狭くてボロい半地下のアパートに住んでいる全員失業中の4人家族キム一家が、長男のギウ(チェ・ウシク)が高台のおしゃれな家に住むパク一家のもとで家庭教師を始めたのをきっかけに、パク家に全員が就職できないか画策し始めるという作品である。階級問題が主題のスリラーで、まあ一言で言うとリアル版『ハイ・ライズ』みたいな話である。 人物や展開はわりとデフォルメが激しく、とくに金持ちのパク一家は記号みたいに描かれている。家庭教師としてやってきたギウに恋をするパク家の娘のダヘ(チョン・ジソ)とかのヨンギョ(チョ・ヨジョン)は相当にステレオタイプな描き方になっている。一方、半地下のアパートと金持ちの家の対比などはものすごくしっかり細部まで丁寧に描かれており、このせいで

    「絆」ってこれだよね~『パラサイト 半地下の家族』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus
    vialavida
    vialavida 2020/01/24
    においと階級についての作品は何かあるだろうが自分は寡聞にして知らないなと思っていたら、ジョージ・オーウェル『ウィガン波止場への道』か。「においというのは階級差別と密接に結びついているものである」
  • そこ、車売っちゃダメだ~『家族を想うとき』と男らしさ問題(ネタバレあり) - Commentarius Saevus

    ケン・ローチの新作『家族を想うとき』を見てきた。 www.youtube.com ニューカッスルに住む主人公のリッキー(クリス・ヒッチェン)は良い仕事を見つけられず、配送ドライバーの仕事に就く。形式上は請負で仕事を受けているようになっているが、実際には雇われドライバーとして酷使されるだけで、ろくに休むこともできない。リッキーも介護士であるのアビー(デビー・ハニーウッド)も多忙であまり子供たちと過ごす時間がとれず、やがて息子のセブ(リス・ストーン)は非行に走りはじめ… 基的には偽装請負と貧困問題がテーマの作品である。リッキーは形の上では自営業者なのだが実際は全くそうではなく、休むだけで罰金をとられるし、娘を車に乗せるとか、自由に休憩をとるとか、自営業者なら自分の判断でやっていいことがほとんどできない状況に追いやられている(おそらくこの雇用形態は違法だと思われる)。いわゆるギグ・エコノミー

    そこ、車売っちゃダメだ~『家族を想うとき』と男らしさ問題(ネタバレあり) - Commentarius Saevus
  • 2010年代映画ベストテン - Commentarius Saevus

    毎年恒例のid:washburn1975さんのところでやっている企画に参加します。今年は映画テン年代ベストテンです。 順位がつけられなかったので、順不同でいきます。自分のブログでレビューしてあるやつはリンクします。 ・『お嬢さん』(2016) お嬢さん <スペシャル・エクステンデッド版&劇場公開版>2枚組 [Blu-ray] posted with amazlet at 19.12.14 TCエンタテインメント (2017-07-05) 売り上げランキング: 18,146 Amazon.co.jpで詳細を見る ・『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015) マッドマックス 怒りのデス・ロード [Blu-ray] posted with amazlet at 19.12.14 ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント (2016-04-20) 売り上げランキング: 2,119 A

    2010年代映画ベストテン - Commentarius Saevus
    vialavida
    vialavida 2019/12/15
    saebouさんのお陰で『お嬢さん』と『バーフバリ』2作は見ました。いずれも面白かったのでこれからも批評活動を末永くよろしくお願いします。
  • 『アナと雪の女王2』メモ(ネタバレあり) - Commentarius Saevus

    『アナと雪の女王2』を見てきたのだが、これはどこかの媒体に長いレビューを書くかもしれないので、とりあえず気付いた点のメモだけ置いておこうかと思う。 ・秋の葉などを基調とした赤っぽい色調で、前作とは違う色合いを見せようとしている。 ・ロマン主義の絵画にすごく影響を受けている。たまにフリードリッヒみたいである。 ・私が前作について批評で指摘したようなことがすごく意識されていて驚いた。 ・エルサにガールフレンドはいない。アセクシュアルである。 ・台は終盤、回収しきれていない感がある。 ・エルサの終盤の衣装がフィギュアスケートかサーフィンのコスチュームみたいで体にピッタリ張り付いており、かなりフェティッシュ化されているように思った。氷を操る力とともにあるエルサのアイデンティティを象徴していると思われるのだが、一方でディズニーのヒロインとしては限界と言えるくらい尖った衣類なのではという気がする。ア

    『アナと雪の女王2』メモ(ネタバレあり) - Commentarius Saevus
  • 献血ポスター問題について - Commentarius Saevus

    ここ3週間近く議論が続いている『宇崎ちゃんは遊びたい!』献血ポスターについて、このようなtogetterまとめが投稿されました。 togetter.com これは吉峯耕平弁護士が私と行った議論をまとめたセルフまとめです。セルフまとめで相手の議論について「saebou先生の反倫理的な「すごく高い倫理」」などという中立性に欠けるタイトルをつけるのはどうかと思いますが、あまりにも偏ったまとめであること、またこの話が始まって以来、全く私がしている話を見ずにデマに近い内容を流してくるツイッターアカウントや嫌がらせをしてくるツイッターアカウントが後を絶たないため、自分の意見をまとめてここに書いておこうと思います。 1. どうして私が献血にこだわっているのか 2.理念をどう広告に出すか 3. 作品の倫理的側面について議論するのは法律でも、規制でもない 4. 広告は他の芸術と違う 5. オタク文化だけ攻撃

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  • 『ミーアキャットの世界』みたいな…『ライオン・キング』(2019) - Commentarius Saevus

    『ライオン・キング』(2019)を見た。1994年のアニメ映画のリメイクである。 www.youtube.com 物語はほぼアニメの原作と同じで、ライオンの王である父ムファサ(ジェームズ・アール・ジョーンズ)を殺されたシンバ(ドナルド・グローヴァー)が紆余曲折の上、簒奪者である父の弟スカ-(チュイテル・イジョフォー)に復讐して王になるまでを描いた作品である。CGを活用してホンモノみたいな「実写」の動物と風景を作りあげており、技術的には非常に革新的だ。 と、いうことで、とてもリアルな動物の比較的自然な動きが特徴の作品なのだが、そのせいでなんか動物ドキュメンタリーに勝手に人が声をあてているみたいで、ミーアキャットの生態に昼メロ風の声をあてた『ミーアキャットの世界』を思い出してしまった。さらに、話が完全に『ハムレット』ばりの宮廷陰謀劇で、『ミーアキャットの世界』よりもずいぶん人間社会準拠なのが問

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  • 働かないための冬休みのブラックリスト10点(書籍+映画) - Commentarius Saevus

    夏休みに「英語文化について知りたい人向けの、夏休みのブラックリスト10点(書籍+映像作品)」を実施したところ好評で「またやれ」というご意見があったので、冬休みもやろうと思う。しかしながらただやるだけでは面白くないので、冬休みらしく休むためのブックリストを作ろうと思う。 冬は寒い。雪も降るし風も吹く。外になんか出たくはない。さらにクリスマスと正月もあるので、にぎやかなことが好きな人は仕事なんかしないで遊びたいし、気味の人は祭りなんかほっといて引きこもりたいところだ。遊ぶにしても引きこもるにしても、やはり働きたくない。 なんといっても世の中の人はあまりにも勤勉すぎる。政治的立場に関わらず、保守派だろうがリバタリアンだろうが社会主義者だろうがフェミニストだろうが、我々は働くことで自己実現でき、全てがよくなるかのような幻想にとらわれているように見える。どこを見てもやれビジネスだ、やれ実用性のな

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  • 「あるトランス女性が見た北村紗衣『お砂糖とスパイスと爆発的な何か』」に応える - Commentarius Saevus

    新刊『お砂糖とスパイスと爆発的な何か』第4章の「女性映画としてのトランスジェンダー女子映画」について、トランス女性の方から以下のような批判を頂きました。この批評は『タンジェリン』と『ナチュラルウーマン』を扱ったものですが、これについてこちらのブログでは「『タンジェリン』や『ナチュラル・ウーマン』がトランス女性の出演するトランス映画であることに一定の評価はしつつも、そのなかで出てくるステレオタイプ的な女性像などを論難し、全体としては「古くさい」ものと評価するという内容」で、「ありがちなシス(トランスでないひと)がトランスに向ける、差別的と言ってもいいようなもの」だと評しています。 snartasa.hatenablog.com 私はシス女性であり、トランス女性に対してマジョリティとしての特権性を有する立場にあります。その特権性からトランス女性を傷つけた事態を重く受けとめています。こちらの記事

    「あるトランス女性が見た北村紗衣『お砂糖とスパイスと爆発的な何か』」に応える - Commentarius Saevus
  • 宣伝に騙されてはいけない、ヒーローが戦う娯楽映画~『RBG 最強の85才』 - Commentarius Saevus

    『RBG 最強の85才』を見てきた。アメリカ最高裁判事で性差別をはじめとするさまざまな不平等、不公正と戦ってきたルース・ベイダー・ギンズバーグ(通称RBG)に関するドキュメンタリーである。RBGは劇映画『ビリーブ 未来への大逆転』のヒロインでもある。 www.youtube.com RBGはユダヤ系移民の家庭の娘で、50年代にコーネル大学に入学した。さまざまな性差別を受けつつ優秀な成績で大学と大学院を卒業し、弁護士になるが、ユダヤ人女性を雇ってくれる事務所はどこにもなく、ラトガース大学の教員になる。そこでジェンダーと法律に関する研究・教育を行い、アメリカ自由人権協会の活動などに参加するようになる。性差別的な法は合衆国憲法に定められた法の下の平等の規定に反するとして裁判を起こし、法を変えさせる活動に従事したのち、判事となり、さらにクリントン政権下で最高裁判事に任命される。最高裁では妥協的だが

    宣伝に騙されてはいけない、ヒーローが戦う娯楽映画~『RBG 最強の85才』 - Commentarius Saevus