突然、苛立ちがエスカレートするとき 僕と息子がその病院を初めて訪れたのは、8月下旬の、とにかく暑い夏の日だった。 僕たちが病院の最寄り駅で電車から降りたのは、午後3時ちょうど。一日で一番気温が高くなる時間だった。文字通り、うだるような熱と湿気が押し寄せて、全身からどっと汗が噴き出した。 でも、駅のプラットフォームに立った僕をイライラさせたのは、その暑さなんかじゃなかった。そんなことは、正直、どうでもよかった。 僕にとっての最大の問題は、何よりも、予約した診察時間までこれから30分もあることだった。病院はまだ昼休みの時間帯とかで、中に入れない。やむなく、何かをしてその時間を潰すしかなかった。「30分もあるんだな」と、僕は息子に言い聞かせるともなくつぶやいて、改札口を出た。 駅の周りを見渡しても、息子と一緒に入って時間を潰せるようなファミリーレストランはないようだし、こういうときに一番頼りにな
![「息子と僕のアスペルガー物語」 時間に細かすぎる親子(奥村 隆) @gendai_biz](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/f67009777c7ed94186acb4a185e89aae8031545b/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fgendai-m.ismcdn.jp%2Fmwimgs%2F9%2F2%2F1200m%2Fimg_929920d24636d79ebd019e7d58f95967294994.jpg)