冷戦時代の境界線が残る東アジア 東アジアの地域統合が欧州のように進まないのはなぜか、という質問をしばしば受ける。中国の存在とかナショナリズム、あるいは発展度合いの相違とか、さまざまな回答があり得るが、ひとつの鍵は緊密な経済関係とは裏腹に存在する安全保障上の問題である。欧州には、冷戦下でも北大西洋条約機構(NATO)のような西側諸国をまとめていく枠組みがあった。それが西欧統合の基礎となり、冷戦後にはNATOが東に拡大して、欧州連合(EU)拡大の基礎となった。 だが、東アジアはそうではない。反共同盟はあったものの、米国とその同盟諸国の間のハブ・アンド・スポーク関係が基本で、日韓、日台など横の関係は強固とは言えなかったし、冷戦時代が終わっても、日本の敗戦および朝鮮戦争を経て形成された安全保障上の境界線は現在も残されている。昨今、これらの境界に変化の兆しが見られるのも確かだが、当面はこの境界線が維
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