世の中には二種類のルールがある。政治の場で決まるルールと、政治以外の場で決まるルールだ。前者の代表は法律であり、後者の代表は道徳だらう。 法律上の合法違法と道徳上の善惡は必ずしも一致しない。たとへば自動車で日本の道路の右側を走つたら違法だが、右側通行そのものが道徳的に惡いわけではない。米國に行けば逆に左側通行が違法になることからもわかるやうに、左右のどちらを合法、どちらを違法とするかは、たんなる便宜上の問題にすぎない。 だが一方で、法律上の合法違法と道徳上の善惡が一致する場合も少なくない。たとへば他人の財産を盜むことは、法律上は竊盜罪となり違法だが、道徳上も惡とされる。日本でもアメリカでも、その他どの國でも、生活に困つた者がやむを得ず盜みを働き、同情されることはあつても、盜みそのものが道徳的に立派な行ひとしてほめられることはない。 もし私が總理大臣だつたとして、刑法改正の議論の場で「物を盜
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