二十世紀を代表する經濟學者の一人、ミルトン・フリードマンの『選択の自由』(西山千明譯、日本経済新聞出版社)が新裝版で再登場した。しばらく品切れになつてゐたので、復刊で手に入れやすくなつたのは喜ばしい。ただしこの本は注意して讀まなければならない。それは市場經濟を忌み嫌ふ論者が言ふやうに、フリードマンが極端な市場原理主義者だからではない。逆である。フリードマンの惜しむべき缺點は、市場原理主義を徹底して貫いてゐないところにある。 フリードマンが妻ローズとの共著で1980年に出版したこの本は、政府による經濟への介入が人々の暮らしにいかに害惡を及ぼすかをわかりやすく説いてゐる。たとへば消費者を守るためには企業活動を規制しなければならないと思ひ込んでゐる人は、第7章を讀むべきである。消費者保護を目的とする政府の機關がじつは大企業の寡占的利益を守るためにつくられ、消費者の利益を損なつたことが明らかにされ
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