幸いにして(?)僕は言われたことはないのだが、社会学をやっていると、「社会学が前提としている近代とかポストモダンとか言うのは、全部欧米社会の話なんであって、日本にいる我々には、ちょっと違うんじゃないか」といわれることがあるらしい。 こうした考えの原因は、「近代」というものを個人主義・自由主義・民主主義といったような「近代的理念」と同一視するところにある。確かに、そのような理念は、現在の日本社会では、実現されていない(実は、世界中のどこでも実現されていない)。しかし、それをもって日本を「近代化論のあてはまらない社会である」ということはできない。なぜなら、「近代的理念」は「近代」の本質的部分ではないからである。 近代の本質的部分は、「近代的制度」であって、「近代的理念」はその制度に組み込まれた人間の心的状態に対応するように事後的に発明されるものであるにすぎない。 さて、それでは「近代的制度」