もし、それができることだつたら、 生れるずつと前から二人が知りあつて、そして、恋しあつて、 こんな世のなかに生れなければよかつたのに。 金子光晴 「展望」(「金子光晴詩集」岩波文庫収録) 東京三ノ輪の浄閑寺は、吉原遊女の投げ込み寺として知られる浄土宗の寺である。ここは「生れては苦界、死しては浄閑寺」の碑や永井荷風「震災」のそれ、三遊亭歌笑の墓、新吉原総霊塔などあれこれ見所があるのだが、いまひとつに吉原の品川楼で情死した遊女・盛紫と警部補・谷豊栄の比翼塚*1がある。アラーキーの写真集でたびたび見かける、土台続きの墓である。死んでしまって、ようやくふたりは結ばれたのであった。So romantic! 上の金子光晴の詩を読んだ際に、この墓の二人のことを想いだした。 ● 浄閑寺(東京都荒川区南千住) 左からが比翼塚・新吉原総霊塔・墓所 今でこそ浄閑寺は立派な寺であるが、もともとは荒廃した寺であった