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ブックマーク / ojohmbonx.hatenablog.com (47)

  • こぼれる華になる - OjohmbonX

    「ねえ、よっちゃん」 「おれは達樹だってば。たっちゃん。よっちゃんはお父さんでしょ。おばあちゃん、ボケちゃってんだから」 生意気な孫! あたしちゃんとたっちゃんって呼んだじゃない。あたしがボケてるだなんて、有紀さんがたっちゃんに悪口いってるんだから。ほんとに許せない、くやしい。良雄も良雄だよ。有紀さんの肩ばっかりもってあたしをボケてるなんて言うんだから。あたし実の母親だよ? どうしてあたしの味方してくれないんだ。 「良雄、あんたどうしてあたしの味方してくれないのよ」 「だからおれは達樹だってば」 生意気な孫! あたしは達樹をビンタしてた。良雄がギャーって泣き始めた。へんなの。良雄がお父さんに叩かれて泣いてるわ。あたしが作ったカレーをおいしくないって良雄が言ったから、お父さんが良雄をビンタして「嫌ならべるな」って怒ったんだった。火曜日の夜はサザエさんを見てたけどお父さんがテレビ消したから、

    こぼれる華になる - OjohmbonX
  • 生命活動として極めて正常 - OjohmbonX

    課長はPC社外持出し許可申請書に素早く目を通すと、机の引き出しから拳銃を取り出して脇に立っていた課員の眉間を撃ち抜いた。課員は課長の手が当然印鑑を取り出すものと信じて疑う暇もないまま死んだ。居室にいた私たちは射撃音と同僚の死に動揺したものの、しいてパソコンや書類に向かい続けた。課長は内線4650をダイアルした。 「生産管理課長の磯崎でございます。総務課の押上様をお願い致します。押上様。お世話になっております。さて、当課の課員が一名死亡しましたので遺体処置申請書を回送しますのでよろしく処理のほどお願い致します。」 次に課長は内線3800をダイアルした。 「生産管理課長の磯崎でございます。工務課の田無様。お世話になっております。死体引取りの依頼です。一名です。場所は122号館3階の生産部生産管理課居室です。急ぎではありませんが。総務へは連絡済みです。明日の13時。承知しました。よろしくお願い致

    生命活動として極めて正常 - OjohmbonX
  • 純粋怪談 元水路 - OjohmbonX

    日が落ちても暑さが残る、夏の夜でした。仕事帰りにすぐシャワーを浴びてたんです。それで頭を洗っているときに「ギッ」って音が風呂場の扉からして。立て付けが悪いのかなと閉め直しても、また体を洗っている最中に「ギッ」と鳴るんです。その時は陶しいなと思っただけでした。 洗い終わって出ようとした時です。扉が開かないんです。内側に引いても動かない。思いきり引いたらちょっと開いたけど、向こう側から強い力で引っ張られて閉まったんです。誰かがいる! 一人暮らしなのに誰かが向こう側にいる。一気に心拍数がはねあがって一瞬硬直してしまいました。でもすぐに、もしその「誰か」が風呂場に入ってきたらヤバいと思って、足で思いきり扉をつっぱって開かないようにして、そのままじっとしてました。 空き巣や強盗、あらゆる可能性を一気にぐるぐる考えずにはいられませんでした。今思えば馬鹿げているかもしれませんけど、レイプ犯の可能性さえ

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  • 171×59×19 - OjohmbonX

    [ 1 ] 高画質になるのも考えもんだなと思いながら、酒井は右手を思いきり伸ばしてスマホで自撮りを繰り返す。ベストショットを小さくリサイズし、トイカメラ風に軽く加工して一度は納得したものの、思い止まって加工した画像を削除する。ちょうどその瞬間にメールを受信する。 「カズっていいます。掲示板見てメールしました。よかったら返事ください168.55.19」 酒井は返信ボタンを押し、文に「がぞ」と入力する。変換候補の一番目に「画像交換できますか?」と辞書登録された文章が表示される。それを選んで送信する。ベッドに寝転んで落ち着かない気分で待っていると、ほどなくしてまたメールを受信する。 「こんな感じです」 添付された写真を見て酒井は、勝ったと思った。「俺はこんなです」と先ほど撮影した未加工のベストショットを添付して送信する。 自分の顔写真を酒井は見返す。朝から3時間も費やした中でのベストだとしても

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  • さようならアーティスト - OjohmbonX

    道端に吐かれたゲボ、階段に吐かれたゲボ、駅のホームに吐かれたゲボ、スクロールしていけばいくつもの、色とりどりのゲボの写真が流れていく。そんなブログがあった。何のコメントもプロフィールもなく、それがどこなのか、どんな意図で撮られたのか、いったい誰が撮っているのかもわからなかった。 ブログタイトルは「ゲボ」だった。 インターネットが広く開かれた空間だなどという言説は、まるで正しく、その正しさゆえにまるで無意味なのだ。例えばいつも通る道の脇にふいに空き地ができたとき、人はいったい今までそこに何が建っていたのか思い出せない。民家だったのだろうと思っても、かつての形も特徴も何も思い出せない。衆目にさらされた環境にあっても誰もが見過ごしてしまう。そんな民家に似たブログは世界中にいくらでもあって「ゲボ」もその一つだった。 2004年から開始され、当初月に1枚ほどのペースで写真はアップされていたが、200

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  • ブラックハンターよしえがいくわよ〜 - OjohmbonX

    あたしブラックハンターよしえ。45歳。世の中にはびこるブラック企業に潜入して闇をあばく。政府の密命を受けて、長かった自宅待機からついに解き放たれる。今度の獲物は全国チェーンの居酒屋、八兵衛。ブラックのにおいがプンプンするわ。待ってなさいよ〜。よしえが行くわよ〜。 面接おちた。年下のガキみたいな男が店長で、あたしホールでもキッチンでも何でもするっていったのに馬鹿にした顔して、うちは大学生とか若い子中心でやってますからだって。あたしだってハンターやってますからですけど!? 店長のくせしてほんと生意気。ブラックのにおいプンプンする。完全に黒ですね。 でもかえって落ちてよかったかもしれない。近所の八兵衛だから、知った人がきたら困る。もしあたし「正体」バレたら終わりだもん。死ぬしかないもん。 もっと遠くの八兵衛にしよう。待ってなさいよ〜。よしえが行くわよ〜。 面接うかった。当然よ。とりあえず水曜から

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  • 進研ゼミが見てる - OjohmbonX

    算数のテスト中にゆうたろうが「あっ」て言って、うちらみんな一気にゆうたろうの方見た。 「進研ゼミでやったやつだ!」ってゆうたろうが言って、みんなくっくす、くっくす笑った。水谷先生が 「静かにしなさい。」って言ったけど、水谷先生もちょっと笑ってた。ゆうたろうはいつも急に笑わせてくるから。授業がおわって北野さんが水谷先生のとこいって 「先生も笑ってたでしょ。先生も笑ってたでしょ。あたし見たもん。先生も笑ってたでしょ。」って言って、水谷先生も進研ゼミのことは知ってたんだって。 「先生も進研ゼミのこと知ってるらしいよ!」って言いはじめて、みんなが先生のところに集まった。 「ねえなんで先生も知ってるの? 先生大人でしょ? 先生のとこにも進研ゼミのマンガ届くの? 大人にも届くわけ?」みたいなこと北野さんが聞いた。ここは北野さんがさいしょに先生に聞いたから、今は北野さんがリーダーになってる。先生は大人で

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  • ギャル万葉集 - OjohmbonX

    ツイッターで「#ギャル万葉集」のタグ張って、32首まで詠んでみました。このタグで色んな人が詠みだして、物のギャル歌人まで出て。そんな夢見ながら詠んでたんだけど、自分以外に書く人なくて。あきらめてひとまずこれで終わらせて、5千年後に発掘されたい。 ヤバイっしょ。日焼け止めとか関係ない。アタシのココを黒くするカレ。 アタシだけ ブラックホールにのまれても アタシはマジで すべてに感謝 ギャルサーを、抜けても抜けてもそこは闇 ファミレスにいる アタシはひとり こら重力! アタシのヒザをいじめるな! だんだん地球にめりこむアタシ。 よく聞いて。アタシほんとはギャルじゃない。ただの40の美魔女なのよね。 ちぢれ毛を あつめてカレのこと想う。ほんとはぜんぶアタシのインモウ。 地獄でも カレとだったらパラダイス。つけまでアタシ エンマ殺すよ? フジサンとか アタシの中ではただの山。マジでカレシが世界遺

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  • ごんにんげん - OjohmbonX

    あたし友だちとかいないじゃん? だから一人でシャズナのトイレにいるわけ。このへんのゲーセンで一番おおきいのはシャズナだから。トイレもいい感じだし。それに隣のマックにそのままつながってるから便利だし。 でもシャズナにいるとヤマ高の女がいっつも大量にいてムカつく。中山高校ってはっきしゆって偏差値ひくい。あたしは偏差値のことカンペキわかるけど、あいつら偏差値とかも一つもわかんないと思う。だからバカのヤマ高の女たちはいっつも群れてて、すっごくウザい。シャズナがヤマ高の最寄り駅の近くにあるからあいつら溜まってる。 それであたし、ヤマ高の女に嫌がらせとかしてるわけ。積極的にしてる。タイコのゲームしてるやつからバチ盗んだり、UFOキャッチャーでとったキティ奪って首もいだり、エアホッケーのパック取り上げて口につっこんでやったり。そうゆうことしてる。だって、あたし友だちとかいらないじゃん? いつも群れてるの

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    murashit
    murashit 2013/05/11
    此頃都ニハヤル物だ
  • ともみあたしともみ - OjohmbonX

    あたしとともみって親友じゃん? てか神友じゃん? だからはっきり言うんだけどー。あたし、ともみのこと嫌いってかんじする。 あ、ちがうちがう、嫌いってっても、いい意味で嫌いだから。 だーょ。あたしたち神友じゃん? わるい意味で嫌いだったらそれって神友じゃなくない? それって敵だし。 で、なんで嫌いかっていうと、くさいから。 ともみってくさいよ? 小さいときからくさくない? セミ炒めたみたいなにおいするじゃん。 えー? 今知ったの?? うけるー。 うけるんですけど。 あたしさぁー。 ずーっとともみがわざとセミみたいなにおいさせてるって思ってて。ちがうとかびびるよね。自動的にセミ臭いとか。 あ、でもでもぜんぜんイケてるってー。あたしがショップの店員ならそう言う。 あたしはともみのこと嫌いだし、みんなもともみのこと嫌いだけど、夏になると、すっごいいっぱいオスのセミ、いっつもともみにたかってるじゃん

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    murashit
    murashit 2012/09/26
    マスターピースだ
  • ラブ・ラビリンス - OjohmbonX

    あたしの顔を見て、あたしのダーがあたしに 「うるせえ」 とどなった。あたしは去年から一言もしゃべってないのに。 「メーンゴッ」 あたしは2012年に入って最初の言葉をしゃべった。 「うるせえドブス」 ダーはもっと怒ってピスタチオをあたしに投げつけた。ピスタチオはあたしが2週間前に近所の家から拾ってきただ。 あたしはすっごく好きだから、よく近所の家の中に入ってを拾ってくる。名前をつけてかわいがって2、3日すると、「を探しています」の張り紙を見かけるようになる。張り紙の写真やイラストの特徴が、びっくりするくらいあたしのに似てるから、あたし、を探してるおうちにあたしのを連れていく。そのおうちがちょうどあたしがこの前を拾った家だから、重ね重ねびっくりしてるのに、そのうちの人、ちょうど探してるだったってあたしのを見ていうから、もう、あたし、激烈にびっくりしちゃって。ゆずりあいの精

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  • 絶望的な幸福が始まる - OjohmbonX

    妖怪の娘 八十歳はぜったい過ぎてる。なのに妊娠してる。しかも足がぐちゃぐちゃ。どーなってるの? 優先席の権化みたいなおばあさんがこっちに来る。優先席に座ってるぼくの方へ! おばあさんがぼくの前に立った。全身に大量の「おなかに赤ちゃんがいます」のキーホルダーをつけてる。思わず見上げると、おばあさんはぼくをガン見してた。白目をむいてるけどぜったいぼくを見てる。そしてガクガク震えてる。 席を譲った方がいいのかな? でもこう見えて実は元気かもしれない。いいんですいいんですって席を譲らせてくれなかったら恥ずかしいじゃん。老人扱いするなって怒られたら恥ずかしいじゃん。 「せ、席を、譲っていただけないでしょうか」 ほとんどヤスリで木を削るみたいな音だったから聞き取りづらかったけど、おばあさんがぼくにそう言った。それでほっとして、公式に席を譲ろうと思って立とうとしたら、いきなりとなりのサラリーマンがぼくの

    絶望的な幸福が始まる - OjohmbonX
    murashit
    murashit 2012/06/18
    ポエジー
  • ロスト・テクノロジー - OjohmbonX

    ああ、君が今あわてて手に取ったスプレーのことで、少し昔話をさせてくれないだろうか。君の時間を一方的に止めて、奪って、まったく何様なのだろう、暴力的なやり方だとわかっているけれど、ぜひ話をさせてくれないだろうか。 佐々木兵衛はすでに息子に家督を譲って余生を過ごすばかりの身であった。しかしその肝心の息子が奸計にかかって失脚させられた挙句、自死に至るに及び、暗い気持ちで刀を取って家を出た。 剣にかけては藩内で比類なしと謳われた兵衛を前に、ただひたすら狼狽えるばかりの奸徒を目にして気が抜けた兵衛は、この男を切り殺すのは止めにした。もともとが復讐心というより帳尻を合わせるつもりで刀を取っただけなのだ。それで兵衛は相手の脇をすりぬけざまに一閃、相手のまげを切り落とした。体面を潰せばそれでよしとした。 しかし二人が驚いたことに、地に落ちたまげは、ぐねぐねと芋虫の如く蠢いていた。二人は顔を見合わせて、まげ

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  • つつきつつかれ - OjohmbonX

    白刃をだらりと提げた噂の辻斬りを面前にしてもなお平内は、自身が標的とは露ほども考えなかった。名のある遣い手を選ぶと噂の辻斬りが、まるで剣に疎い自分に用のあるはずもないと信じきっていた。 「抜け」と辻斬りに言われるまま訝しげに刀を抜くに及んでようやく、自分が斬られようとしていることと、その理由に思い至った。 平内は今世話になっている家へ、死んだ親の残した金で買った免許皆伝を提げ、 「私から剣術を奪えば何も残りますまい」などと嘯いて転がり込んだ。ずいぶん剣術に熱心な家主が子弟専属の剣術家を探していると耳にしたのだった。住み込んで平内はただちに馬脚を現した。 「貴様、剣などさっぱりではないか」と詰る家主にしかし 「さようで」と笑っていたら、何となく呆れて許されたのだった。そのや子供たちからも気に入られ、それから家事や雑務や子供の世話をしてほとんど下男のようにその家に留まっている。およそ二百五十

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  • 愛、この永遠の青 - OjohmbonX

    君は当にミイちゃんを愛しているのだろうか。 それはひょっとして君が、青狸などではなく型ロボットなのだというアイデンティティを、内外に誇示するための手段に過ぎないのではないだろうか。のミイちゃんに欲情する私はだと証し立てるための。君のひみつ道具で賄えはしない欲望を満たすための道具に、彼女を知らず知らず貶めてはいないだろうか。 こんなことを言えばきっと君は、(いったいどういうメカニズムなのかな)顔を真っ赤にして怒るだろう。湯気さえ立てるかもしれない。そして僕をひとしきり詰って行ってしまうだろう。しかしきっと僕の疑問は、喉にひっかかった小骨のように、忘れたと思えば不意に軽い痛みを与えて思い出させ、君を不快にするのだ。 そのたびに君は、その不愉快を与えた僕に苛立つだろう。けれど君は僕を恨み続けはしない。賢明な君は早晩、その疑問の所有権が僕から君へとすでに移っていることに気付く。ああ、君が愚

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    murashit
    murashit 2012/04/01
    オチ!
  • 名人伝 - OjohmbonX

    「ファミチキをひとつ」 コンビニの店員が顔を上げるといっこく堂がレジの前に立っていた。ちょうど彼が、世界中の腹話術師を相手にバトルを挑み続けては連戦連勝、残すは日の五月みどりだけかと思われていた季節のことであった。彼は口も動かさず 「ファミチキを、ひとつ」 と言い放って、ちょうどイヤフォンで聞くように頭の中全体で響いた声に驚いて店員が止まっていると、 「私です。あなたの脳に直接語りかけているのです」 といっこく堂の声が脳に響いた。口の動きと無関係に声を自在に出すという、腹話術を究めたかに見えたいっこく堂であったが、その境地すら突き抜けて、ついに声を出すことすら止めてしまった。そして直接人々の脳内に語りかけるようになったのだ。なおも停止したままの店員に対して突然、 「フ ァ ミ チ キ」 と頭が割れるほどの大音声で、教会の鐘を打ち鳴らすようにファミチキの言葉がたたき込まれてようやく、店員は

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  • 見た、見ていない/見えていない、見ない - OjohmbonX

    小学生のときに、地域のおじいさんやおばあさんをエアガンで撃つという授業があった。それは体験学習のひとつで、ちゃんと頑丈なおじいさんやおばあさんが選ばれてるから大丈夫だったのに、僕たちは勘違いして、学校の外でも撃つのが流行った。その辺のおじいさんやおばあさんは弱いので、すぐ死ぬ。でも命のこととかはよく分からなかったから、気にせずに撃っていた。特に僕と、2こ下の僕の弟がすごく熱心で、おじいさんやおばあさんを追いかけ回してると、あいつら、戦争を経験してるから、すごい早さで電柱をゴキブリみたいに上っていって、カラスみたいに電線にとまるんだ。エアガンは威力が足りなくて電線までは届かない。だんだん小学生たちは諦めていって、おじいさんおばあさんたちは次々に安全な電線の上にいるようになって、老人会なんかも電線の上で開かれるようになった。 ところがどっこい、うちはマンションだったのでベランダから老人たちを撃

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  • クソの壁 - OjohmbonX

    もちろん私は更年期でイライラしてるから、電車の中では人のすねをずーっと蹴りつづけてる。座れなかったときはもっとイライラするから、座ってる人たちの顔に屁をかけてまわってる。 背が高い割にほっそりして、紫色がかった銀縁のメガネをかけたスーツ姿の若いオールバックの男が、満員電車で座席を二人分占領して、あまつさえ脚まで組んで座ってる。見るからにヤクザだ。こわいよ。でも私にだって更年期のプライドがある。私はヤクザの足元にしゃがみ、ヤクザの革の紐をほどいて丁寧にを脱がせ、その尖った革をヤクザに突き刺した。 「ぐえ。何すんだババア、殺すぞ」 「尖りすぎなのよ!」 「はあ?」 「よ。こんなに先が尖ってるじゃない!」 私はヤクザのを尻にあてて屁をこいた。そしてそれをすばやくヤクザの鼻に当てた。 「臭えっ、殺す!」 私はぽろぽろ涙をこぼした。どうして? 私なんにもしてないのに、どうして殺されちゃうの

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    murashit
    murashit 2010/12/01
    ぐうの音も出ない
  • 小説についてのあれこれ――感動? 短編? 宣言! - OjohmbonX

    序 ここ最近「OjohmbonX」で被ブックマーク数が比較的多かった(5以上だった)2エントリ「赤い糸で、つながる小指」 (id:OjohmbonX:20100907)、「どこの惣菜屋でも起こってる、ありふれた出来事」 (id:OjohmbonX:20101009)についてその物語を要約してみると、前者は「占い師になったヤクザが組長に諭されて組に戻る話」、後者は「男子大学生に恋をした中年女性が大学生に諭されて夫の許に戻る話」となり、両者とも「元の鞘に納まる」という物語の構造に易々と納まっていることがわかります。 ここではどうしてそんな事態に至ったのか、加えてその周辺のあれこれ――掌編、短編、長編の違いについて、作者の特権性について、人称について、批評について等々――を冗長さを厭わず考えてみたいと思います。 目次 序 細かく見てみよう その他例証 構造が共通する理由 二つの仮定 ズレない、と

    小説についてのあれこれ――感動? 短編? 宣言! - OjohmbonX
    murashit
    murashit 2010/11/08
    ここしばらく考えつづけていたことに明確な道筋を与えてもらったように思う。ハイル岐阜。
  • どこの惣菜屋でも起こってる、ありふれた出来事 - OjohmbonX

    四十五のあたしが草系男子大学生の股間をまさぐっているのよ。パート先の惣菜屋で。うらやましいでしょ。でもこれは神様に選ばれたあたしにしか許されてないの。神様が、あたしに、股間をまさぐってもいいよ、仕事中に、って許してくれたのよ。 新しいバイトだよって店長から紹介されたときも、指導係としてお惣菜の手ほどきをしてるときも、彼のことは何にも思わなかった。でも彼は言ったわ。 「あの、俺、iPod買ったんですよ。nanoってやつで、8GBと16GBのがあるんですけど、16GBのを買ったんですよ」 「どんなものを聞くの」 「俺、三木道三が好きなんで、三木道三しか入れてないです」 「Lifetime Respectしかないじゃない! 16GBもいらないわよ」 「いや、ちゃんと16GB分めいっぱいLifetime Respectを入れてるから大丈夫です!」 何が大丈夫なのよ。それでこの男子大学生を「三木道

    どこの惣菜屋でも起こってる、ありふれた出来事 - OjohmbonX
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    murashit 2010/10/11
    すべてがパンチライン