気付くと画面には米国全体が映っている。「カメラ」はさらに引く。そのうちに地球全体、さらには太陽系、ついには銀河系全体が映し出される。 一転、「カメラ」はズームアップモードに移り、再びカップルの映像が現れたかと思いきや、今度は男性の手を、皮膚を、細胞を、はては素粒子の動きと思われる光景まで、どんどん拡大しながら、見せ続ける。マクロからミクロまでをシームレスに映し出す。さながら、宇宙の果てにあるカメラで天文学的数字の超高倍率のズームレンズを使ってファインダーを覗いているかのようだ。 この映像作品には、さらに驚くべき2つの要素がある。1つは制作年代。1968年に第1作が、77年にこの展覧会で展示している第2作が作られた。衛星から地球を撮影した写真や実写モードのインターネット地図を見慣れた現代人にとっても新鮮だ。1960~70年代に、宇宙と細胞を行き来するような発想があったことに脱帽する。 もう一