小泉純一郎元首相は、政治には上り坂、下り坂のほかに「まさか」という坂がある、と述べたが、その「まさか」が起きた。民主党の小沢一郎代表の辞任表明と撤回だ。 小沢氏ほど毀誉褒貶の激しい政治家はいない(本コラム第4回:「小沢一郎」とはどういう政治家か 参照)。筆者などは、「毒にもクスリにもならない」政治家よりは、政局転換の節目で大胆に動いてきた小沢氏の存在感を買いたいのだが、それにしても、一般には今回の騒動は分かりにくかったに違いない。 小沢氏はとかく説明不足で、ときに、投げやり、傲慢、独断専行に映る。長い間、政治記者として小沢氏の政治行動をウオッチしてきたが、ふだんの小沢氏はシャイで、酒席などでは実に楽しい座談の名手でもある。それが、政局を動かそうというときには「壊し屋」「自爆テロ」などと悪罵を投げつけられることがままある。 今回の辞任騒ぎでも、大連立構想は小沢氏の側から出た、といった趣