映画「父親たちの星条旗」の冒頭、「ほんとうに戦争を知っているものは、戦争について語らない」という意味合いのことばが流れる〈1〉。深く知っているはずのないことについて、大声でしゃべるものには気をつけたい。これは自戒としていうのだが。 読売新聞主筆・渡辺恒雄が文芸春秋に書いた文章のタイトルは「安倍首相に伝えたい『わが体験的靖国論』」〈2〉。それは、消えつつある「ほんとうに戦争を知っている」世代から、そうではない世代の指導者への遺言のように、思えた。 渡辺は、「先の戦争」の責任について語り、その象徴として「靖国問題」を取り上げた。宗教性を持たせぬようにしたため、対立を報じられることの殆(ほとん)どない、他国の追悼施設に対し、特異な宗教的施設である靖国を戦没者の追悼の場所とすることへの強い疑念を表明した渡辺は、さらに、「戦争体験者の最後の世代に属する」ものとして、自分が経験した軍隊生活の悲惨な実態
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