人の記憶にはバイアスがある。「文部科学省汚職事件」と総称される一連の出来事の中で人々の記憶に今も残るのは、おそらく東京医科大学医学部医学科で行われていた不正入試のほうではないか。 東京医大は一般入試で、女子受験生や4浪以上の男子受験生に差別的な扱いをしていた。3浪までの男子受験生に一定の点数を加える優遇装置を講じていたほか、OBの子供など縁故受験生にも寄付金の額などを条件に適宜加点していた。 その後、文科省による実態調査で、東京医大だけでなく複数の大学でも不正な選抜が行われていたことが発覚した。特に女子受験生への差別的な扱いはメディアにも大きく取り上げられ、社会問題になった。元受験生たちが集団で大学を訴える損害賠償請求訴訟が各地で起き、裁判所が大学側の不法行為を認め、原告らに対する損害賠償を命じたことも記憶に新しい。 その一方で、一連の不正入試が明るみ出るきっかけとなった事件のほうは、世間