太平洋戦争の終戦直前、旧満州(中国東北部)で起きた旧ソ連軍の日本人虐殺事件「葛根廟(かっこんびょう)事件」の生存者らが証言集をまとめた。「私たちは国に見捨てられた棄民だった。せめて満州に散った人々の『紙の墓標』となれば」。当時九歳で助かった大島満吉(まんきち)さん(78)=東京都練馬区=は思いを語り、事件の舞台だった中国と日本の最近の関係悪化を憂う。 (安藤恭子) 「葛根廟事件の証言-草原の惨劇・平和への祈り」(新風書房)を製作したのは生存者や遺族でつくる「興安街命日会」。戦後七十年を前に、代表の大島さんを中心に二年がかりでまとめた。生存者や遺族五十五人の証言や、調査で確認できた七百三十四人の犠牲者名簿を収録している。