記事:明石書店 『生きづらさの民俗学—日常の中の差別・排除を捉える』(及川祥平・川松あかり・辻本侑生編著、明石書店) 書籍情報はこちら みんながそれぞれに生きづらい世の中に向きあって、自分たちのこととして考えてみましょう。 ややもすると説教くさくなってしまいそうな呼びかけなのだが、この本では不思議とあまりそんなふうに感じなかった。『生きづらさの民俗学』の魅力を誰かに伝えるときに、何よりもまずこのように紹介するだろう。なぜならば、このことは私が語りたい民俗学の魅力や可能性、そして厄介さとつながっているような気がするからだ。 「日常」の民俗学 民俗学はこの20~30年くらいで大きな変化を経験した。まだ世間のイメージとの間にずれはあるかもしれないが、少なくとも2000年代以降に民俗学に触れた我々世代の学徒にとっては、「ローカルな伝統文化の研究をするのが民俗学」という自己規定はすでにだいぶ相対化さ