世界の経済と金融の中心地ニューヨークのウォール街で始まった反格差社会デモが世界各地に拡大しつつある。その様子はテレビやインターネットで伝えられ、抗議行動は欧州、アジアの80カ国950以上の都市に飛び火しているという。 東京・六本木でも小規模ながらデモがあった。先進国の都市を中心に広がるデモは、世界が今なお2008年のリーマン・ショック後の金融・財政危機から立ち直れない現実の帰結といえる。景気低迷や高い失業率に直面し、未来への希望を描けない若者世代が重苦しい不安と抑えきれない苛立(いらだ)ちを抱えている現実は、心情的には理解できる。 1929年の大恐慌を教訓に、米国では自由競争と機会均等の原則に立ちつつ、金融の暴走に歯止めをかける工夫を重ねてきた。だが冷戦終結後、ドル基軸のグローバル化が一段と進む中で、そうした姿勢を見失った。格差社会の拡大は、強欲にかられて金融・経済の倫理やリスク管理を怠り