ギリアン・フリン「ゴーン・ガール」を読む。 理想的な夫婦と周囲から見られていたエイミーとニック。だが結婚記念日の当日エイミーが消息を絶ち、その失踪には夫が関わっているのではないかと疑いを向けられ・・・ 上巻では夫婦のすれ違いを微に入り細に入る、こと細かな描写で描きそのリアリズムに驚嘆する。夫であるニックはハンサムで人当たりのいい男として描かれるが、妻の日記であらわになっていく欠点、また欠点。ひとつひとつの欠点はどんな人間だってもつ欠点で決して夫は悪人ではないのにもかかわらず、そのひとつひとつが積み重なると、世にも嫌な男として現前しはじめるのだ。この執拗なまでの男下げの描写に感嘆と賞賛と寒気を禁じえない。 作者が女性だからなのか、男性の嫌な部分を見つけるのが抜群にうまい。最初は夫にあやしい感じすらなかったのに、徐々にこの男が妻を殺したんじゃないか?とじわじわと読者を誘導していく手並みがあざや