平成四十一年の晩夏、勤め先の金1.600.000.000円ちょうどを横領、かたことの日本語を喋るおんなと逃避行に出たものの、六日目の朝に目覚めると、そのおんなに持ち逃げされており、どうにか財布に残っていた銭金を頼りに国道をさまよう。彷徨五日目、くたびれ果て、外房・太海、民宿に入る。ラウンジで缶ジュースを買うかどうかと小一時間悩んでいると、私よりもいくばくか若い男が申し訳なさそうに話かけてくる。「あのう 野球…って知ってます? 知ってますか! 川端は?清川は?山根は? …じゃあ秋村は? そうです、宇部商出身の秋村です。なんだ、詳しいじゃないですか。ここはひとつ、昭和生まれ同士、ファミスタ、ファミスタをやりませんか?」 その男、自転車で神奈川から来たという。つちのこを避けそびれて転倒し怪我を負い、ここに留まっているという。暇をもてあまし、宿のなかを物色するうちに都合よくファミスタを見つけ出した
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