夜。 子どもが寝静まってから、ドアを静かに開けて外へ出た。 少しひんやりとした空気が体を纏った。 夏はいつ終わったのだろうかと曖昧な記憶を辿る間にも、冬の足音はゆっくりと近づいてくる。そんな今でしか感じられない心地良い、ひんやりとした秋の空気だと思った。 特に行き先がある訳ではない。 ただ歩きたかっただけなのだが、都会ではない「この地」では、ある程度方向を決めて歩かないと路頭に迷ってしまう。これと言ったランドマークもないのだが、さてどうしよう、と考えた時に「そうだ、海を目指そう」と思った。 海なし県出身の私は、海に対してとても憧れがある。幼い頃、家族で訪れた太平洋も日本海もキラキラと水が輝いていてどこまでも広かったなぁと思いながら、てくてくと歩き出した。 国道が近づくと、車の音とともに動くテールランプの灯りが私の視界に入ってきた。テールランプの放つ光はひんやりとした夜の方が綺麗に見えるのは
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