2016年12月31日 論壇に未来はあるか 大晦日。久しぶりに予定が入っていなかったために、午後に近くの空いている喫茶店でコーヒーを飲みながら読書をして、それからたまりにたまったメールの返信を書き始めています。数百通はあると思いますので、おそらくは「年越し」はメールを書きながら?!になる見通しです。 一昨日は、神楽坂のカフェで若松英輔さんの新刊本『言葉の贈り物』を読んでとても感銘を受けましたが、今日は喫茶店で、『中央公論』2017年1月号を読みました。なんとなく、一昨日の読書と繋がっていて、楽しかったです。 その中でも素晴らしかったのが、やはりというか、山崎正和先生の「『論壇』の危機と回復への曙光」です。すでにお読みになったかたも多いのでは。 いったい今の論壇で何が問題なのか。山崎先生は、学問的なトレーニングを受けない者が、現在の論壇では根拠のない軽薄で感情的な主張を繰り返すことに警鐘を鳴
日常生活のなかの「誇り」 安倍にとっての「開かれた保守主義」とは、「この国に自信をもって生きていきたい」というような一般的感覚なのだろう。それゆえに、同書で「ナショナリズム」を論じる際にも、1964年東京オリンピックのエピソードから始めている。たとえば、重量挙げで、「世界中の大きな人間と競いあって、日本人が勝ったという誇らしげな気分」に触れて、そこに一つのナショナリズムを見ている。 1954年生まれの安倍にとって、東京オリンピックはまだ小学生、いわば幼少期の経験であった。だが、「日本が世界にむかって、その存在をこんなに誇示しているのかと、新鮮に思った」のであり、また「幼いながらも誇らしい気持ちを抱いた」という。 ここに、安倍が6度にわたって国政選挙で勝利した一つの理由が垣間見えるのではないか。すなわち、イデオロギーとして保守主義やナショナリズムを排他的に掲げるのではなく、オリンピックという
高坂正堯の「宰相吉田茂論」(『中央公論』1964年2月号)は、それまで「保守反動の権化」とされていた吉田茂の評価を一変させた。安倍晋三元首相の評価はかつての吉田茂以上に分裂していると見る細谷雄一慶應義塾大学教授が、安倍元首相の政治家としての様々な顔を論ずる。 (『中央公論』2022年9月号より抜粋) 戦後日本外交の基礎を作ったのが吉田茂だとすれば、冷戦後の日本の外交路線をアップデートしたのが安倍晋三元首相なのである。 冷戦後を作った政治家 ちょうど今から60年前の1962年9月、アメリカのハーバード大学留学から帰国した政治学者の高坂正堯(こうさかまさたか)京都大学助教授は、東京の国際文化会館に滞在していた。 国際文化会館調査課長であった蝋山(ろうやま)道雄は、『中央公論』編集次長の粕谷一希(かすやかずき)に連絡して、この若き政治学者と面会することを推奨した。早速、粕谷は、自らと同世代の高坂
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
処理を実行中です
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く