村上春樹氏が居たウェルズリー大学で2023年春学期を過ごした「わたし」の記録です。 1.伯母の町に春樹が来る「私には母の姉にあたる伯母がいるの。ねえねって呼んでた。オレンジのラパンっていう車に乗ってる、まつ毛がくるんと上がったひと。車に乗ったらいつも『ラパパパパパパン、不思議な笑顔♪』って歌を歌って、前方のミラーにかけた匂い袋が揺れてて。ラックには、ねえねが好きな槇原敬之のCDが数枚入ったケース。マイケルジャクソンも好きで、スリラーを流しては怖がる私を笑ってた。何より凄いのはね、ねえね、本を読むの!よしもとばななと、村上春樹。そんなに本の虫って訳じゃないんだろうけど、大人の女の人の家に本がある、ってだけで、ねえねはこの本を読んで悲しくなったり嬉しくなったりするんだなって思ったら、それがすごい嬉しかった」 「で、なにがいいたいわけ?」 「セシル、私にとってあなたがその叔母みたいだってこと。」