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ブックマーク / honz.jp (8)

  • 『枯れるように死にたい 「老衰死」ができないわけ』解説 by 小鳥輝男 - HONZ

    私は滋賀県で開業している一医師である。 平成19年より「三方よし研究会」を主宰している。この研究会は看護師、薬剤師、リハビリ技師、歯科医師、医師などの多職種で構成されている。発足当初は「東近江地域医療連携ネットワーク研究会」と呼ばれ、多職種が連携を図り、脳卒中患者が、あらかじめ指定された急性期、回復期、維持期の病院や施設を、納得してもらった上で移ることにより、能率良く地域の医療資源を利用することが検討されていた。いわゆる脳卒中連携パス研究会である。そこでは患者も病院もウィン、ウィンの関係が語られた。しかし医療に勝った、負けたはそぐわない。むしろ、地元近江商人の家訓である「売り手よし、買い手よし、世間によし」の「三方よし」にならい、「患者よし、機関よし、地域よし」をモットーに顔の見える関係づくりをめざした地域連携の研究会として「三方よし研究会」と名付けられた。 やがて月一回の研究会を重ねるう

    『枯れるように死にたい 「老衰死」ができないわけ』解説 by 小鳥輝男 - HONZ
  • 『階級「断絶」社会アメリカ』 アメリカン・プロジェクトの終焉 - HONZ

    このは、2012年1月に発売された『Coming Apart』の邦訳である。書は、発売直後からニューヨーク・タイムズ、ウォール・ストリートジャーナルなどの高級紙に軒並み書評が掲載され、全米で大きな反響を集めた。ノーベル賞経済学者ポール・クルーグマンがブログで批判的コメントをする一方、『マネーの進化史』のニーアル・ファーガソンは肯定的意見を寄稿するなど、その反響は賛否の入り混じったものだった。米国の二極化に警鐘を鳴らす書を巡って、米国言論界は二分されたのである。 著者は保守系シンクタンクAEIの研究員チャールズ・マレーである。彼は1994年に共著者として、人種によるIQの差異を指摘する『Bell Curve』を出版し、これまた大論争を巻き起こした経験を持つ。そんなマレーの最新作である書の重点は、アメリカがどれほど断絶してしまったのかを明らかにすることに置かれている。 書が大きな論争

    『階級「断絶」社会アメリカ』 アメリカン・プロジェクトの終焉 - HONZ
  • 『霊柩車の誕生』 - そして消えゆく今 - HONZ

    そう言えば最近、街中で見かけないなと軽い気持ちで手にとったのだが、読めば読むほど奥が深い。 書『霊柩車の誕生』は1984年に刊行。その後1990年の新版を経て、この度三回目の増補新板となった、知る人ぞ知る名著である。路上から消えゆく今を起点に変遷を辿ると、その誕生をもって”終わりの始まり”を意味していたということがよく分かる。 霊柩車とは、文字通り遺体をおさめた霊柩を運搬する自動車のことを指す。多くの人がイメージされる霊柩車は、荷台部分が伝統的な和風建築のスタイルで形づくられ、屋根には唐破風がかけられているものであるだろう。これは通常、宮型霊柩車と呼ばれるものである。 上半身が神社仏閣系の装飾で、下半身は高級乗用車。この組み合わせ、さては名古屋発祥かと思っていたのだが、どうも大阪に起源があるようだ。誕生したのは、大正の終わり頃の話である。(※名古屋説もあり) 興味深いのは、この組み合わせ

    『霊柩車の誕生』 - そして消えゆく今 - HONZ
  • 『稀で特異な精神症候群ないし状態像』 - HONZ

    6月のHONZ定例会で濱崎さんから紹介されたである。版元の星和出版はおもに精神医学の専門書を取り扱う出版社だ。書の医学書であり、けっして娯楽のために書かれたではない。それゆえに興味位で読むべきではない。患者と医療従事者にたいするリスペクトを持って読むべきである。 書はタイトルどおり「稀で特異な精神症候群ないし状態像」を取り扱った33人の医師による論文集である。22の症例が取り上げられている。「憑依状態」「多重人格」「空想虚言」などは、小説映画などでも取り扱われており、想像することが可能な症例だ。 しかし、「重複記憶錯誤」となると想像が難しくなる。その症候は「実際には単一の場所(建造物)や人物が複数存在する」と患者が主張する症候だというのだ。この論文には3件の自験例が示されている。自殺を企画してマンションから転落し、K病院に入院していた男が「自分はもう一つのK病院に入院してい

    『稀で特異な精神症候群ないし状態像』 - HONZ
  • きちんと悲しんで、そして忘れてもらうために。 - 『エンジェルフライト 国際霊柩送還士』 - HONZ

    誰もがいつかは、死を迎える。 あなた自身も、そしてあなたの愛する人も。 もちろん私も、そして辛いことだけれど、私の愛する人もいつか。 死とは何だろうか。 死に行く人にとってそれは、命の終わり。現世という旅路のいちばん奥にそっと置かれたベッド。 ならば、残された人にとって、死とは何だろうか。 愛する人の命は、もうそこにない。でも、そこに残ってしまうもの。もう二度と戻ることのない究極の「喪失」でありながら、それでもそこに厳然と「存在」してしまう現実。残されたものたちが向き合う死というものが、そんな絶望的な矛盾の中にしかないものだというならば、その時、人には何ができるというのだろうか。 大切な、かけがえのない人の遺体と向き合う。 遺体。もうそこに時を刻む生命は宿っていない。でも、遺体は時を刻む。葬儀を終えて、火葬場に運ばれて。遺体と向き合うことのできる時間は、それまでのとても限られた、わずかばか

    きちんと悲しんで、そして忘れてもらうために。 - 『エンジェルフライト 国際霊柩送還士』 - HONZ
  • 『思い通りの死に方』 新刊超速レビュー - HONZ

    医療ミステリー作家・久坂部羊のはすべて読んでいる。熱烈なファンなのである。かというと、そいういう訳でもない。久坂部羊こと久家義之クンは、阪大医学部時代の同級生であり、いまでもしょっちゅう飲みに行く友人である。出版のたびに恵送してくれるので、礼儀正しい私としては、ついすべて読んでしまっているだけのことである。 しかし、久坂部羊のがたくさん売れたところで、私にはなんの得にもなりません。友人だからという理由で、このをお薦めするわけではありません、ということを、COI(=conflict of interest、利益相反)事項とし、まず宣言しておきます。 あとがきにあるように、このは、久坂部羊が、発行部数50万部突破とかいう大ベストセラー『大往生したけりゃ医療とかかわるな』のおこぼれをちょうだいしようと、著者の中村仁一医師にもちかけた対談の記録である。さすが、ほとんど勉強をせずに、優秀な同

    『思い通りの死に方』 新刊超速レビュー - HONZ
  • 『おもかげ復元師』新刊超速レビュー - HONZ

    大きな絶望に出会ったとき、人は「せめて」という希望にすがる。“せめて生きていて”が、“せめて見つかって”になるまで、どれほどの心の葛藤があるだろうか。2011.3.11、東日大震災の直後、津波にさらわれた家族や恋人を探し、多くの人たちはその“せめて”という言葉を口にした。 『おもかげ復元師』の著者であり主人公である笹原留似子は、岩手県北上市を拠点に「桜」という小さい納棺の会社を営んでいた。職業は『おくりびと』という映画で一般的になった納棺師である。葬儀社に依頼されてご遺体に直接向き合う仕事である。ただ普通の葬儀の場合と少し違うのは「参加型納棺」という商標登録を取っていることだ。笹原流哲学とはこうだ。 悲しみと苦しみのなかにあるご遺族のなかに私も入れていただいて、大事な亡き人のお話を聴かせていただきながら一緒に泣いて、ときには思い出話で一緒に笑って。感情を合わせるところから、納棺を一緒にさ

    『おもかげ復元師』新刊超速レビュー - HONZ
  • 『寿命1000年』 - 不老不死のエンジニアリング - HONZ

    たしかに”言ったもの勝ち”の世界ではあると思う。これまでにもHONZの朝会では、こんなやこんなだって話題になってきた。しかし、そこで競い合うように示されてきた数字とは、桁が一つ違うのである。 誰だって長生きはしたいと思うのが、世の常であるだろう。そんな我々の寿命を2倍にも3倍にも、あるいは好きなだけ延ばせると確信している男 ― それが書の主人公、オーブリー・デ・グレイだ。 彼は人間の寿命が500年または1000年になると予想し、100万年という数字までほのめかしている。しかも、そんな新人類の時代が50年、ことによると15年ほどで訪れるかもしれないと言うのだ。 一体、彼はどんな男なのか?それを知るためには、こちらの動画を少しばかり見てもらえると話が早い。 ヒッピー風の風貌を持ち、ギークのような早口で自分の言い分をまくしたてる。おおよそ生物学者のイメージとはほど遠い印象だ。それもそのはず

    『寿命1000年』 - 不老不死のエンジニアリング - HONZ
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