2000年からのおよそ2年間、主に有機物超伝導という分野で、米国の名門研究機関ベル研究所に勤める若いドイツ人物理学者が、次々に画期的な成果を発表した。その着想にあらゆる物理学者は舌を巻き、ノーベル賞受賞も時間の問題とされていた。しかし、すべては捏造であった。2003年までに、Science、Nature、Physical Review、Applied Physics Letters、Advanced Materials という一流学術誌は合計28本にものぼる論文の取り下げを発表した。 本書は、その経緯を詳細に取材したNHKのドキュメンタリー番組の書籍版である。取材は徹底的かつ詳細、重要人物はほぼ全部網羅されており、その番組が、国際的な数々の賞に輝いたというのもうなづける。 現代の物理学の研究は、大きく素粒子と物性に分かれており、それぞれの中で理論と実験に分かれている。本書の主人公 ヘンドリ