新聞・テレビにあふれる悲劇や美談だけでは大震災の真実は語れない。真の復興のためには、目を背けたくなる醜悪な人間の性にも目を向けなければならない。原発作業員が働く卑劣な「火事場泥棒」の現場をフリーライター、鈴木智彦氏がレポートする。 * * * 2月中旬の午前6時、原発作業拠点・Jヴィレッジ脇の検問に、ボロボロの軽自動車を載せた積載車がやって来た。運転手は警察官に暫定通行証を見せ、警戒区域に入っていった。 ここを過ぎれば警察の監視はない。早朝は警戒区域内のパトロールは手薄だ。お役所仕事の警察官を乗せた大型バスがやってくるまで、あと2時間はある。 運転手は検問の先にある道の駅に車を停めた。車外に降り、防護服を着込んでいる。装備から考えて、かなり奥まで入る気だろう。車はすぐに発進した。距離をとって後を付けた。 5キロ、10キロ、ひたすら走り続けた。30分以上走った頃、地図で現在地を確認す