サクッという衣の歯ごたえのあとにじゅわっと押し寄せる肉の脂。ごはんを一口、味噌汁少々。キャベツを豪快に頬張って口直しをしてから、また次の一切れ。 とんかつ、キャベツ、味噌汁、ごはん。この最強の組み合わせを前にすると、食べることに夢中になって、決まって無口になる。 「とんかつは和洋中のどれ?」と聞かれたら、十中八九の人が「和食」と答えるだろう。ごはんと味噌汁、という和食に欠かせない品々との相性を考えたら、そう答えて当然という気もする。 だが、考えてみてほしい。とんかつは、肉料理である。「なにを当たり前のことを!」と言われそうだが、ちょっとガマンして読み続けてください。 日本に「肉食」の習慣はなかった 日本では、7世紀後半から肉食が表向き禁じられてきた。一般に肉を食べるようになったのは、鎖国が終わりを迎え、文明開化の時代になってからのこと。その間、およそ1200年。肉を使った調理法や、肉料理に