【読売新聞】 日本のポピュラー音楽には、世界を魅了する潜在力がありながら、十分に生かし切れていない。音楽業界と政府は、海外に売り込むための戦略を強化する必要がある。 人口減による国内需要の低迷が懸念される日本にとって、アニメや漫画な
韓国には基本的に地震はない。たまにどこかで小さな揺れがあったと気象庁が発表するくらいだ。ということなので、日本で大きな震災があると日本人はよく韓国人から「韓国に永住しなさいよ」といわれる。一方、韓国人は逆に、日本旅行中にホテルなどで感じた揺れを〝恐怖体験〟としてよく大げさに語る。 そんな韓国で今、地震映画が上映され話題になっている。日本にもファンが多いイ・ビョンホン主演の『コンクリート・ユートピア』。大地震で廃虚となったソウルのマンション街を舞台に、たった一つ倒壊を免れたマンション住民の生き残りをめぐる人間模様という仕掛けで、お互い助け合って自分たちだけのユートピア(理想郷)を目指すが、最後は分裂し挫折するという話になっている。 被災地の風景が終始、暗いうえに人気スターのイ・ビョンホンも悪役なので楽しい映画ではない。これ米アカデミー賞に出品予定というが、どうだろう? 元気な韓国映画界は投資
広島・長崎の原爆投下から78年の8月、原爆開発を指揮した米物理学者を主人公にした公開中の映画「オッペンハイマー」を見た。 世界初の核実験までの緊張と成功後の歓喜。日本を降伏させて「ボーイズ(米兵)を帰国させる」ために2発の原爆が使用された後は、世界核競争を危惧して水爆開発に反対した科学者の葛藤が描かれていた。 投下約1カ月後の広島の様子が被爆者の写真とともにオッペンハイマーらの前で報告される場面がある。映し出されるのは見るに堪えない様子の「原爆の父」の表情だけだ。実際の被爆地の光景は流れない。爆発を閃光(せんこう)と大音響で表現したところで、核の恐ろしさは伝わらないと思った。 5月、G7サミットの取材のため広島を訪れた際に外国人記者と平和記念資料館を見学したことがある。 昭和20年8月6日以前の市街の写真から被爆後の展示に進んだ途端、彼女の表情は凍り付いたように変わった。口を手で押さえつつ
(月刊「正論」5月号より) 篠原 章・評論家日本における軍歌の事始めは、慶応4(1868)年2月に遡ることができる、というのが通説である。起点の歌は、幕府征討のために東上した新政府軍が歌う「宮さん宮さん」である。「トコトンヤレ」という囃子の歌詞に着目して、「トコトンヤレ節」「トンヤレ節」と呼ばれることも多い。 軍歌の起源については諸説ある。記紀歌謡に現れる久米歌が元祖であるという説、東北地方で広く歌われる民謡「さんさ時雨」が最初であるという説などがある。行軍の際の身体的律動や戦争・戦闘の際の士気を高める効果を期待されるのが近代の軍歌だが、前記2説は近代の軍隊を想定したものではない。行軍の曲として利用され、一般国民の人気も得た「宮さん宮さん」を事始めと考えたほうがよさそうだ。 作詞は、吉田松陰の門下で明治政府の要職を歴任した品川弥二郎(1843〜1900年/山口県萩市出身)、作曲は、緒方洪庵
ボストン郊外で開催中の夏の風物詩「タングルウッド音楽祭」を訪ねた。黒人ジャズ・ミュージシャンのウィントン・マルサリス氏が作った曲を、白人主体の交響楽団が演奏すると知り、聴いてみたくなったからだ。 米社会には「黒人のジャズ」「白人のクラシック」という固定観念が残る。クラシックの作曲でも知られるマルサリス氏の活動は、異なる人種が刺激し合い、新たな文化を生む米国らしさを体現するもので、高い評価を受けている。 演奏されたのは金管楽器と打楽器による曲だ。ファンファーレのような華やかさの一方で、ほの暗さを感じさせ、終盤にかけジャズの雰囲気が強まる流れ。気がつけば、私も体を揺らして楽しんでいた。 タングルウッドは指揮者の小澤征爾氏やバイオリニストの五嶋みどりさんゆかりの音楽祭。ミーハーな気持ちも手伝いニューヨークから足を延ばした私だが、残る2演目の作曲者の出身地がそれぞれ現在のウクライナ東部ドネツク州と
将棋の7冠を保持する藤井聡太棋聖が世の中の支持を受けるのは、圧倒的な強さだけが理由ではないはずだ。 最善の一手を求め続ける姿勢が、「考える」という営みの尊さをわれわれに改めて気付かせてくれるからではないか。 今年の棋聖戦五番勝負が幕を閉じた。藤井棋聖が佐々木大地七段の挑戦を3勝1敗で退け、4連覇を果たした。通算5期で得られる「永世棋聖」の称号まで、あと1期とした。 インターネットで中継された全4局は、いずれも終盤まで目の離せない名局で、多くの視聴者を引き付けた。藤井棋聖一人の力だけでは成り立たない将棋の醍醐味(だいごみ)を味わい、勝負の行方を見守ったファンは多かったはずだ。 若い世代は「タイパ(タイムパフォーマンス)」を重視するといわれるが、ときに1時間を超えても盤面の動かない将棋が、それでも注目を集め続けている。世の中の価値観が「時間効率」のみに染まることなく、「考える」ことの価値を大事
人形浄瑠璃文楽「絵本太功記・尼が崎の段」の武智光秀=平成30年6月、大阪市中央区の国立文楽劇場(提供・国立文楽劇場、協力・人形浄瑠璃文楽座) ユネスコの無形文化遺産にも登録されている伝統芸能「人形浄瑠璃文楽」に関して今春、あるニュースが飛び込んできた。文楽の技芸員(演者)になるための専門学校的な制度である「研修生制度」に今年度は応募がなく、研修が始められないという。 研修生制度は師匠への直接入門だけでは人材を賄えなくなったため、昭和47年に始まった。一流の講師陣に2年間無料で知識や技術を教わるもので、現在全技芸員の半数以上、直近10年では入門者15人のうち13人と8割以上を研修生出身者が占める。 たった1年研修生がいなかったとて…と思うかもしれないが、特に後輩が入ることで先輩が次の修業の段階に進める3人一組の人形遣いにとっては、「たった1年」が後輩の技術の向上とモチベーションにじわじわと効
令和2年4月に初めて緊急事態宣言が出たことを受け、休場した「なんばグランド花月」。お笑いの殿堂から、人々の笑い声が消えた=令和2年4月11日、大阪市中央区(渡辺恭晃撮影)5月に新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが2類相当から5類になった。マスクをしている人も徐々に減る中で、コロナ禍が始まった頃の忘れてはいけない記憶が、こぼれ落ちていきそうな感覚を抱いている。 思い返せば感染拡大が始まった3年前の春以降、各地の劇場は休館と再開の繰り返しを余儀なくされた。不要不急という言葉を前に、音楽や演劇、伝統芸能、お笑い、落語などが上演機会を失う姿を数多く目の当たりにした。感染拡大を防ぐため必要な措置だったとは思う。 しかし、そもそも劇場は不要不急の存在なのか-。街の情景が以前の姿に戻りつつある今、改めて取材で掬(すく)った劇場に生きる人々の言葉を顧みながら、その問いへの答えを見つけてみようと思う。
予算と時間、手間をかけて、丁寧に作られているドラマ 2023年5月にNetflixで配信開始されたオリジナルドラマ「サンクチュアリ -聖域-」が話題を呼んでいる。大相撲の世界を舞台にして、そこで奮闘する若者の姿を描いている。 【写真を見る】かなり明るい「サンクチュアリ」の舞台裏 このドラマが大ヒットを記録している最大の理由は、面白いからということに尽きる。その面白さがどういうところから生まれているのかについて、いくつかの要素に分けて考えてみたい。 第一に、圧倒的な予算と時間と手間をかけて、丁寧に作られていることだ。Netflixのオリジナル作品ということもあり、恐らく一般的な地上波のテレビドラマとは比較にならないほど多額の制作費がかけられている。 力士の役を演じる役者たちは、本物の力士に見えるように筋肉も鍛え抜かれていて、それだけでも制作者の並々ならぬ意気込みを感じる。取組が行われる会場や
平成21年に38歳で亡くなった歌人、中澤系さんの絶版となっていた歌集がこのほど復刊され、話題となっている。日常への違和感を痛烈に放つ中澤さんの歌集と、最近印象に残った詩集を紹介する。 ◇ 中澤系さんの『中澤系歌集 uta0001.txt』(皓星社・2200円)に圧倒された。口語による現代短歌の極北に位置する歌集だろう。 この世界を「平常運行」させていると思われるシステムに対する違和感、もっと強い言葉を使うなら、憎悪を起点に、夜の道路に落ちている針のように、中澤さんは細く鋭い光を放つ。歌集の冒頭に置かれた歌がすべてを語っている。 《3番線快速電車が通過します理解できない人は下がって》 人工知能(AI)に席巻されるこの世界で右往左往している私自身に投げつけられた歌のように感じられた。「快速電車」とは「タイムパフォーマンス」の暗喩だ。賢い人々はこれに乗って、目的地により早く到達する。それを利用で
映画の都、米ハリウッドなどの脚本家が加盟する全米脚本家組合(WGA)が大規模ストライキに突入して1カ月が過ぎた。脚本づくりの際の人工知能(AI)利用制限や待遇改善が要求の柱だが、映画会社やスタジオなど製作側との合意のメドが立たない。映画や各種番組の撮影、放映への影響が長期化する中、人々の映像エンターテインメント離れが危惧されている。 約15年ぶりのストWGAには約1万1500人が加盟している。動画配信大手ネットフリックスやメディア・娯楽大手ウォルト・ディズニー、アマゾン、アップルなどが加盟する全米映画テレビ製作者協会(AMPTP)と6週間にわたって交渉を続けたが合意に至らず、5月2日から全米各地で大規模ストに突入した。
映画「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」(C)2023 Nintendo and Universal Studios アニメ映画「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」が空前の大ヒットを記録している。今月1日には世界興行収入が12億8800万ドル(約1800億円)に達し、2013年の「アナと雪の女王」を超え、アニメ映画の世界興行収入歴代2位に浮上。国内でも100億円を突破した。マリオの〝生みの親〟が制作に携わり、原作の世界観を生かした映画作りにこだわったことが、大ヒットへとつながった。 マリオというキャラクターは、約40年前に任天堂代表取締役フェローの宮本茂氏によって生み出された。1985年の「スーパーマリオブラザーズ」を筆頭に、ファミリーコンピュータから最新のニンテンドースイッチまで、家庭用ゲーム機で数多くの作品が発売され、幅広い世代がマリオに親しんできた。 「ザ・スーパーマリオ
平川祐弘氏文明の中心と周辺の言葉ローマ帝国以来、中世を通じ、西洋で書き言葉はラテン語が中心で、東洋で中国帝国とその周辺の国の書き言葉は漢文だったのと軌を一(いつ)にする。片や古典ラテン語が文言体として権威があり、片や四書五経の文言体中国語が権威を持ちつづけた。 支配者の優越が強く明らかだと、帝国の臣民はその言葉を表向きは使う。西洋の学問語がラテン語だったように東洋の学問語は漢文だった。 多くの国の最初の歴史は母国語で書かれていない。フランスでは六世紀にトゥールのグレゴリウスが『フランク史』を、イギリスでは八世紀にビードが『イングランド教会史』をラテン語で編纂(へんさん)した。朝鮮では十二世紀に金富軾(キムブシク)が『三国史記』を、ベトナムでは十三世紀末に黎文休(レバンフー)が『大越史記』を漢文で編纂した。日本もほぼ同様である。
対局を終え、名人と書かれた色紙を手に写真撮影に応じる藤井聡太新名人=1日午後、長野県高山村(川口良介撮影) 400年を超える将棋「名人」の歴史に偉大な事績が刻まれた。敬意と拍手をもって新名人の誕生を祝福したい。 藤井聡太棋聖が第81期名人戦七番勝負で渡辺明名人を破り、史上最年少の20歳10カ月で棋界最高峰の名人となった。 谷川浩司十七世名人が昭和58年に21歳2カ月で樹立した記録を、40年ぶりに塗り替える快挙だ。平成8年の羽生善治九段以来、史上2人目となる7冠も同時に達成した。 名人の重みは別格と言われる。他のタイトルには毎年、獲得のチャンスがあるのに対し、名人は挑戦に最短でも5年かかる。 藤井棋聖にとっては、今期が最年少名人となる最初で最後の機会だったが、棋士10人で挑戦権を争うA級順位戦(リーグ戦)は、他に永瀬拓矢王座ら強豪9人が顔をそろえる難関だった。 しかも、4連覇が懸かった渡辺前
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