中国における不動産バブル崩壊が誰の目にも明らかになった。ただ、そのバブルがどの程度のものなのか、崩壊して何が起こるのか、もう一つ明確ではない。その最大の原因は、中国政府が発表するデータが信用できないからだ。折に触れて内外のマスコミが報じるデータからも、全体像を掴むことはできない。ここではフェルミ推定(実際に調査することが難しい数量を論理的な推論によって概算すること)の手法を借りて、中国のバブル崩壊とはなんなのか考えてみたい。
1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員、信州大学経済学部教授、法政大学大学院教授などを経て、2022年4月から現職。著書は「下流にならない生き方」「行動ファイナンスの実践」「はじめての金融工学」など多数。 今週のキーワード 真壁昭夫 経済・ビジネス・社会現象……。いま世の中で話題となっているトピックス、注目すべきイノベーションなどに対して、「キーワード」という視点で解説していきます。 バックナンバー一覧 能登半島地震の発生とその報道で日本国内が動揺する一方、中国では史上最大級の破綻劇が起きていた。1月5日、中国のシャドーバンク(影の銀行)大手、中植企業集団が破産したのだ。ピーク時の運用資産が20兆円を超えた巨大企業は、不動産バブルの崩壊にのまれ、急激に経営
1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員、信州大学経済学部教授、法政大学大学院教授などを経て、2022年4月から現職。著書は「下流にならない生き方」「行動ファイナンスの実践」「はじめての金融工学」など多数。 今週のキーワード 真壁昭夫 経済・ビジネス・社会現象……。いま世の中で話題となっているトピックス、注目すべきイノベーションなどに対して、「キーワード」という視点で解説していきます。 バックナンバー一覧 12月5日に信用格付け大手ムーディーズが中国の国債格付けの引き下げを発表すると、中国本土株市場は下落し、外国為替市場では人民元が売られた。当面、中国からの資金流出が加速しそうだ。今後は地方政府の財政破綻リスクが上昇し、雇用・所得環境の厳しさは高まり、個人消
中国の不動産大手・恒大集団の創業者である許家印が9月27日、警察に連行された。これに前後して、幹部のほとんどが身柄を拘束されたという。 金融システムに与える影響の大きさを懸念し「大きすぎて倒せない」と言われてきたが、創業者連行などの背景には海外への資金移動疑惑や、政敵の排除に利用されたとの説がある。 だが、不動産バブルの崩壊をはじめ中国経済は失策続きで、習近平が自らの失敗のスケープゴートにしようとしているという見方が妥当だろう。 (福島 香織:ジャーナリスト) 【関連記事】 ◎「次は李強首相」との噂がにわかに拡散、中国・習近平の大粛清時代に突入か(9月30日付、JBpress) 中国の民営不動産デベロッパー大手である恒大集団の創業者・許家印が9月27日、警察に連行された。その後の米ウォールストリート・ジャーナルの報道によれば、資産を海外に移動した容疑がかけられているようだ。 許家印はパスポ
2021年9月には、恒大集団が1億4500万ドル(約212億円)に及ぶ金融商品の補償に伴い、巨額のデフォルト(債務不履行)に陥ったことが話題となっていた。当時の恒大集団の負債総額は33.14兆円で、負債比率は1327%にも及んでいた。 そして23年、同社の負債総額は48兆円に膨らみ、米国破産法の申請に至った。この負債総額の規模は08年に経営破綻したリーマン・ブラザーズの63兆円に匹敵するレベルであり、世界中が固唾をのんで中国の経済情勢を見守っている状況だ。 NYダウ平均株価や日経平均株価は1カ月で3%程度のマイナスとなっている。震源地である中国の上海総合指数は1カ月で5%のマイナスとなっており、香港ハンセン指数は7.25%のマイナスと比較的下げ幅が大きいものの、金融ショック的な下落とまでは言いがたく、あくまで市場は冷静に今後の影響を注視している段階であるといえる。
いよいよ中国が「デフレ国家」へ 中国の7月の物価統計で、消費者物価指数(CPI)と生産者物価指数(PPI)がともに前年同月比で下落。2020年以来の低水準となり、いよいよデフレ国家に転落かという観測が高まっています。 月次CPIは、食品とエネルギーを除くコアで0.8%増と1%を下まわる始末。PPIもGDPデフレーターもマイナスとなっています。 21世紀に入ってからは高度成長を謳歌し、指標が発表されるたびに実は鉛筆ナメナメ数字を盛って来たのではないかと言われてきた中国も、このデフレ状況を隠すことはできない状況に追い込まれていることが窺われます。 新型コロナが大感染していた時期には、こうしたネガティブな数字が出るのは驚くべきことではありませんでした。 しかし、この新型コロナ発生後、国民に湯水のように給付金をばらまき史上最大の緩和を実現してみせた米国は、案の定すさまじい「インフレ」に直面しており
中国の不動産大手の恒大集団(エバーグランデ)で、深刻な経営危機が表面化してから約2年。同社は7月17日夜、開示を延期していた2021年と2022年の通期決算を発表した。それらによれば、2年間の純損失は単純合計で8120億3000万元(約15兆7021億円)に上り、恒大集団の傷の深さが改めて浮き彫りになった。 巨額赤字の主因は、保有する不動産や金融資産の減損損失だ。決算報告書によれば、恒大集団の2022年末時点の総資産は約1兆8400億元(約35兆5797億円)。経営危機が表面化する前の2020年末時点の約2兆3000億元(約44兆4746億円)から、2年間で20%も縮小した。 一方、同社の2022年末時点の総負債は約2兆4400億元(約47兆1818億円)に達し、負債総額が資産総額を上回る債務超過に陥っている。その額は2021年末時点の4731億元(9兆1482億円)から、2022年末には
不動産市場の不振が続く中国では、開発業者が経営難に陥ったために工事が滞り、購入者がローン返済を拒否する事態も相次ぐなど、問題となっている(写真:毎日新聞社/アフロ) 今年7月以降、建設工事の停止で引き渡しが遅れている住宅の購入者によるローン返済拒否の動きが中国各地で広がっている。CITIC Futuresのリポートによると、2022年7月25日までに返済拒否が確認された不動産プロジェクトは319カ所に達した。中でも、河南省(約19%)、湖南省(約10%)、湖北省(約8.5%)などの都市が多い。 これを受け、中国政府は緊急対策へと乗り出した。キーワードは「保交楼(不動産の引き渡し保証)」。7月28日に開催された習近平(シー・ジンピン)総書記(国家主席)が主催する中央政治局会議において、「地方政府が責任を取り、不動産の引き渡しを保証し、民生を保証する」との方針が示されたことで、にわかに注目を集
バブル崩壊、深刻な影響 中国の不動産バブル崩壊の負の影響は一段と深刻だ。 1~6月期、大手不動産デベロッパー、碧桂園控股(カントリー・ガーデン)の利益は前年同期比96%減少した。 不動産関連セクターは中国のGDPの約3割を占める。 不動産市況の悪化によって経済成長率は低下し、貧富の格差は拡大している。 また、政府のIT企業締め付けの影響もあり、若年層を中心に失業率も上昇し国民の不満が蓄積されている。 中国人民銀行(中央銀行)は、景気下支えのために金融を緩和し始めている。 その一方で、米国やユーロ圏ではインフレ退治のために急速な利上げが進む。 中国と米国などの金利差拡大などを背景に、人民元の下落圧力はさらに高まるだろう。 それによって中国の債務問題に対する懸念は上昇し、連鎖反応的に資金流出が増加する展開が懸念される。 その結果、中国経済の成長率低下は追加的に鮮明となり、貧富の格差はさらに拡大
香港で14年、中国北京で13年半暮らした後、日本帰国。現地で培った人脈と情報網を元に、日本メディアが触れることができない現地情報を発信。特に最近は、主権返還前の香港での体験と知識をもとに変動が続く香港情勢を市民の視点からウォッチしている。 Twitter:@furumai_yoshiko 個人サイト:https://note.com/wanzee/ メールアドレス:wansfactory@hotmail.com ふるまいよしこ「マスコミでは読めない中国事情」 中国や香港の話題を取り上げる本連載。SNSやメディア報道記事、さらに現地の優秀なメディア人や評論家たちの視線とともに、一体なにが問題なのか、そしてそこに暮らす人々にどんな思いを巻き起こしているのかを、「現地目線」で解説する。 バックナンバー一覧 中国各地で、建設途中のマンションで工事が止まったまま放置されるという事態が起きている。全国
バブル崩壊の痛み 足元で、中国の不動産市況の厳しさが高まっている。 購入者が未完成住宅のローン返済を拒否する動きが広がっている。 懸念されるのは、不動産バブル崩壊の後始末の拡大だ。 それは、中国経済にかなりの痛みを強いる。 不動産への投資に依存した経済運営は行き詰まった。 今後、不動産バブル崩壊の負の影響が深刻化する。 いずれ中国はバランスシート調整と不良債権処理という後始末を余儀なくされる。 問題は、今のところ共産党政権が大手不動産デベロッパーなどに公的資本を注入できていないことだ。 1990年代のわが国が経験したように中国のバブル崩壊の後始末はかなり深刻になるだろう。 それによって中国の景気後退リスクが高まる。 当面、共産党政権はインフラ投資などを積み増す。 しかし、主要な経済対策の一つである高速鉄道計画は、ほとんどが赤字だ。 資本の効率性が低下する中で過剰な投資を繰り返せば、債務問題
2021年下期から低迷が続く不動産市場のテコ入れに中国政府が躍起になっている。2020年以降、バブル抑制を目的に不動産規制を強化してきたが、市場の急激な冷え込みを受けて、今年に入り緩和方向へと舵(かじ)を切った。 金融面では利下げが進んでいる。中国人民銀行(中央銀行)は、事実上の政策金利と位置付けられている最優遇貸出金利(LPR、ローンプライムレート)を毎月公表している。住宅ローン金利などの目安となる期間5年以上のLPRは、1月と5月に低下し現在4.45%となっている。また、5月15日には、1軒目の住宅購入に関しては、住宅ローン金利の下限が0.2%引き下げられている。つまり、現在の住宅ローン金利の下限は4.25%と、年初より0.4%低い水準となっている。 金利は全国的に適用される一方で、北京、上海、広州、深圳の「一線級都市」、各省の省都などの「二線級都市」、その他の中小地方都市である「三、
デフォルトの発生 中国の不動産バブル崩壊の負の影響が一段と深刻だ。 習近平政権は不動産関連の規制を部分的に緩和するなどして不動産市況の悪化をなんとか食い止めようとしている。 しかし、目立った効果が出ていない。 計算方法にもよるが、不動産セクター関連部門は中国のGDP(国内総生産)の3割近くを占める。 中国経済は非常に厳しい状況を迎えている。 5月に入り、事態は一段と緊迫し始めた。 売上高で第3位の融創中国(サナック・チャイナ・ホールティングス、サナック)が外貨建て債券の利払を期限内に実施できなかったことを明らかにしたのだ。 デフォルトの発生だ。 恒大集団(エバーグランデ)など他の不動産デベロッパーの経営体力も低下している。 今後、中国の不動産分野では連鎖的に本格的なデフォルトに陥る企業が増えるだろう。 その中からは経営破綻を余儀なくされる企業も出てくるはずだ。 不良債権問題の深刻化によって
失業率の上昇 足元で、中国経済の成長率の鈍化が鮮明化している。 国家統計局が発表した、3月の購買担当者景況感指数(製造、サービス業、総合のPMI)はいずれも分水嶺といわれる50を下回った。 主に大企業を対象とする景況感調査であるだけに、3月のPMIの内容は軽視できない。 中国は経済成長は明らかの鈍化している。 その結果として失業率が上昇している。 2月の失業率は5.5%に上昇した。 それは都市部を対象にしており、経済全体での失業の状況を正確に表しているとはいいづらい。 不動産バブルの崩壊、IT先端企業への締め付け強化、ゼロコロナ対策の徹底によって、中国の雇用・所得環境はかなり不安定化している可能性が高い。 失業率が上昇すると、国民の社会不満は増大するだろう。 それは、秋の共産党大会で3期続投を目指す習近平政権にとって大きなマイナス要因になるはずだ。 習政権は失業率の上昇を食い止めなければな
中国の不動産業界の資金繰り悪化が止まらない。市場調査会社の克爾瑞が3月7日に発表したレポートによれば、主要な不動産会社100社の2022年2月の(銀行借り入れや債券発行などによる)資金調達総額は前年同月比58.8%減の398億1700万元(約7251億8700万円)に落ち込み、2018年以降の最低記録を更新した。 不動産会社の資金繰り難は、企業規模にかかわらず業界全体に広がっている。克爾瑞の別のレポートによれば、上位10社の不動産大手による2022年1~2月の資金調達額は1社当たり平均51億7700万元(約942億8800万円)と、前年同期より45.44%減少した。それ以外の不動産会社の資金調達額は、おしなべて前年同期の半分以下に縮小している。 そんななか、中国各地の地方政府は地元の不動産業界の苦況を憂慮し、対応に動いている。例えば河南省房地産協会(不動産会社の業界団体)は3月2日、「河南
米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が政策金利の引き上げに動いているが、中国の習近平共産党総書記・国家主席にとって、米金利高は形ばかりの経済制裁よりもはるかに重大な「脅威」になりうる。 話は6年以上前にさかのぼる。FRBは2008年9月のリーマン・ショック後、超低金利政策をとっていたが、15年12月に引き締め策に転じ、政策金利を0・125%から一挙に0・375%に引き上げ、さらに追加利上げを行う構えをみせた。 当時、中国経済は景気減速のために金融機関の不良債権が急増していた。習政権は苦し紛れに15年8月、人民元の対ドル基準レートの切り下げに踏み切って、輸出競争力の強化を狙ったが、資本逃避を加速させただけだった。14年9月には4兆ドル近くあった外貨準備は15年12月には6600億ドル余りも減っていた。そこに米利上げの追い打ちがかかった。 当時のワシントンは対中融和の民主党オバマ政権で
2022年の中国の経済方針を決定する中央経済工作会議が北京で開かれた。会議後に発表された公式声明では、今年1年の経済情勢がまとめられると共に、来年の経済活動の方向性が示されている。 「安定成長」が第一に 会議では中国が直面している需要縮小、供給ショック、市場からの期待値低下という3つの課題について言及があった。 会議の中で、2022年は「穏中求進(安定した中で前進するよう求める)」を維持すると示されたほか、各地域、各部門がマクロ経済安定のために責任を負うこと、経済安定のためにあらゆる分野で積極的かつ適切な方法で政策を打ち出すことが求められた。 中国が直面する経済の下押し圧力は強まっている。今年後半は過度な排出量削減と電力の供給制限による生産停滞、また不動産に対する信用の低下により供給コストが押し上げられ、経済が停滞した。さらに需要の縮小もあり、政府はカウンターシクリカル(反循環的)措置で対
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