毎年減り続けているとされるコメの需要。農林水産省の表現を借りると「主食用米の全国ベースの需要量は一貫して減少傾向にある。最近は人口減少等を背景に年10万トン程度に減少幅が拡大」ということになっている。 需要が減っているので需給を均衡させ、価格を維持するために主食用米の生産を減らす政策が続けられている。いわゆる入口対策と称されるものだが、それに投じられる税金はなんと年間3500億円にもなる。 供給量を減らしてコメの価格を維持するためにこれだけの巨額な税金が投じられているのだが、不思議なことは農水省が言うコメの需要とは一般人の感覚からすると首をかしげてしまう事例が多い。例えば需要が増加している冷凍米飯や米粉は農水省の判断では「主食用」とは見做されない。この分野がいくら増えてもコメの需要増加とはならないのだ。 なにをもって主食用の需要と見做すのか、その根拠となっている「需給調整要領」はこれまで全
6月中旬、新潟県十日町の星峠棚田に行ってみた。星峠棚田は、NHKで特集番組が放映されるなど、景観が美しい棚田として知られている。さまざまな保全措置が講じられ、2019年に議員立法で「棚田地域振興法」が成立したことにより、さらなる支援策が講じられており、その実態を見ようと、この棚田で生産されるコメを仕入れ販売する川崎市の成川米穀の成川亮治社長の軽トラックに同乗した。しかし、そこで見聞きしたことは日本の稲作が置かれている厳しい現実であった。 棚田米を商品化した米穀小売店の苦悩 星峠棚田の現状に触れる前に棚田米を仕入販売している成川米穀の成川社長の取組みを紹介したい。その方が棚田を取り巻く環境への理解が深まるだろう。 成川米穀は創業1929年という老舗の部類に入る米穀小売店で、現社長の成川亮治さんは3代目。成川さんが棚田米を仕入販売しようと思ったきっかけは棚田の景観に惚れ込んだのが最大の理由で、
料理研究家でごはんソムリエの秋元です。この連載ではお米をおいしく食べるために“知っておくと役に立つお話”やレシピをお伝えします。 近年、店頭やテレビのCMで新しいお米の銘柄を目にすることが多くなりましたが、実際にどんなお米なのか、そして今人気のお米はどれなのか? 気になる方も多いと思います。 そこで、今回は2021年のお米のコンクールの結果もふまえて、話題の銘柄をご紹介したいと思います。 日本で一番大きなコンクールで金賞をとる銘柄って? 日本で開催されているお米のコンクールの中で、最も出品数が多く注目されているのが「米・食味分析鑑定コンクール:国際大会」。そして、その中でも頂点と言われる総合部門で金賞を最も多く受賞している銘柄は、皆さんお馴染みの「こしひかり」です。 しかし、その次に名を連ねているのは「ゆうだい21」という銘柄。ん? 聞き慣れない……、お店でも見たことがない、そう思われる方
インターネットイニシアティブ(IIJ)が、農林水産省などとコンソーシアムを結成し、農業IoTに取り組んでいる。その理由は。 「農業のIT化にはいろいろな課題があるが、一番は単純に“もうからない”ということ」――インターネットイニシアティブ(IIJ)ネットワーク本部の齋藤透IoT(Internet of Things)基盤開発部長は、12月5日の事業説明会でこう話した。同社は農家の負担を軽減すべく、現在水田の水管理コストを削減するセンサーなどの開発に取り組んでいるという。インターネット接続サービスやMVNO事業を展開する同社がなぜ、“農業IoT”に取り組んでいるのか。 IIJクラウド本部の岡田晋介ビッグデータ技術課長は、「IoTの技術的な課題はもう見えてきた。問題になるのは、具体的な利活用シーン」とし、「顧客の課題に答えを出していくため、自分たちでもIoT――例えば、文字通り“泥にまみれて”
日本の稲作の未来を考えるうえで、注目すべき存在であるにもかかわらず、じっくり取材する機会がなかった農場がある。琵琶湖の東側、滋賀県彦根市で大規模稲作を営むフクハラファームだ。 先週まで2回にわたり、茨城県龍ケ崎市で140ヘクタールの水田を運営する横田農場を取り上げた。そこで浮かびあがったのは、スタッフが仕事を分担し合いながら、自分の判断で作業する自律分散型の経営だった。農場主の横田修一さんは、ピラミッド型の対極にある営農のあり方を、かつて集落の共同作業の仕組みとしてあった「結(ゆい)」に例えて説明してくれた。 横田農場とフクハラファームは田んぼのある場所こそ東西で遠く離れているが、九州大学の南石晃明教授を中心とした研究チームにともに参加するなど、稲作の発展に向けて連携する関係にある。だが営農のあり方は、トップの個性と農場の歴史によって様々だ。フクハラファームを理解することで、水田経営の未来
農業にはテイストの異なる2つのテーマがある。1つは、AI(人工知能)を活用したスマートアグリや植物工場など、新しい技術によってこれまでの食料生産の限界を突破しようとする農業だ。分野で言うと、施設園芸がその典型。主要企業による様々な農業関連ビジネスもこの文脈の中にある。 もう1つが、新しい技術を活用しながらも、なお生産者の栽培技術の向上に多くを依存する農業だ。稲作をはじめとする土地利用型農業がここに分類される。両者は完全に分断されているわけではないが、栽培の隅々まで制御することを前提に稲作の未来を考えることは難しい。 今回取り上げるのは、この連載の「常連」の1人で、茨城県龍ケ崎市で稲作を営む横田修一さんだ。最近紹介したように、横田さんも田んぼの自動給水機の開発に参加するなど、新しい技術の導入には積極的。だが、その前提として「それでも農家が自分で田んぼを見に行く」ということを大切にしていた(7
異色の農協組合長、小田嶋契氏の取り組みを前回紹介した。コメの生産調整(減反)廃止1年目の今年、多くの産地が様子見を決め込む中で、小田嶋氏が率いる秋田ふるさと農業協同組合(横手市)は、主食のコメの大幅な増産に踏み切った。「無謀な増産」と懸念した農水省から真意を問われた小田嶋氏は、卸からスーパーにいたる詳細な販売計画を示し、懸念を払拭した。背景には時間をかけて培った売り先との信頼関係があった。今回はその続編。 前回を読まれた読者の中には、小田嶋氏の発言を過激と感じた人もいるかもしれない。そして、ひるまず信念を貫く言動は、相手が政治家でも鈍ることはない。以下は、2016年11月2日に自民党本部で開かれた農林関係議員の会合での発言。当時の部会長は小泉進次郎氏だ。 「先ほどから全農改革の話が出ているが、今までと同じでいいというところはどこにもない」 小泉氏が主導した農業改革の最大の標的は農協の上部組
トヨタ流米作りで“ニッポン農業”を強く、元気に:“カイゼン”と“ビッグデータ”を稲作へ(1/4 ページ) トヨタ自動車が農業に本格参入――。 といっても、トヨタが自ら農場を運営して野菜などの農作物を生産・販売したり、最先端の自動車技術を応用したハイテク農機を開発したり、という話ではない。 同社のお家芸といえる「カイゼン」を稲作に生かすため、新たな事業として米生産者の支援に乗り出したのである。この取り組みの先にあるのは、“ニッポン農業”の競争力強化だ。 「なぜトヨタが?」と思う読者も多いだろう。実は、トヨタと農業のかかわりは深い。将来直面するであろう世界の食糧危機に備えるため、畑で栽培できる「陸稲」の品種開発やサツマイモの海外生産など、10年以上前から農業に関する事業を次々と立ち上げた。1998年1月にはバイオ・緑化事業室を設置。翌年5月には愛知県みよし市にバイオ・緑化研究所を立ち上げて、農
「減反見直し」。昨年末、石破茂農相が投じた一石が農業界を揺さぶっている。政府は農政改革特命チームを結成。コメの生産調整の見直しを含めて議論し始めた。「コメの生産調整は必要不可欠」。米価維持が第一の農業関係者はこう口を揃えるが、減反に協力しない農家は数知れず。実効性は上がっていない。 1970年以降、連綿と続けられてきた減反政策。転作を奨励するために7兆円の国費を投入してきたが、この40年で食料自給率は40%に下落。生産調整の対象になった水田の多くが休耕田になった。昨年、発覚した汚染米事件も、本をただせば減反政策に原因がある。農業関係者の利益のために、水田を水田として利用しない愚行。その制度疲労は明らかだ。 「農協、自民党、農水省」。減反政策と高米価政策を推し進めてきたのは、この鉄のトライアングルだった。そして、その恩恵を最も受けてきたのが兼業農家だった。この生産調整が日本の農業にどのような
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