たなびく淡い煙と深遠な香りで仏間やお墓に彩りを添える線香。国産線香のなんと約7割が兵庫県淡路市で作られている。 線香作りは繊細だ。まず伽羅(きゃら)や乳香、ジャスミンなどを銘柄ごとに配合を変え、温湯で練って「練り玉」を作成。これを機械で細かい穴を通して麺状にして乾燥させるのだが、香りを逃さぬよう10日かけて乾かすこともあるという。 深い香りには手間が掛かるのだ。 淡路市と線香との因縁は深い。 推古天皇3(595)年に香木(沈香木)が淡路島に漂着。この世のものと思えぬ香りに驚いた島民は沈香木を朝廷に献上した上、ご神体として神社に祭った。そして嘉永3年(1850年)、大阪・堺から製法技術が伝わり、住民たちは副業として線香作りを始めた。 今でも江戸時代から伝わる手作りの線香工場が立ち並んでいる。 原材料や練り玉、乾燥中の線香の香りがブレンドされて漂う同市は平成13年、環境省の「かおり風景100選