タグ

ブックマーク / honz.jp (33)

  • 『国道16号線 「日本」を創った道』 - HONZ

    私が住む東京都町田市の小田急町田駅の東口の広場には「絹の道」という石碑がある。それをゼミ生に見せてからJR横浜線の下り線に乗り、八王子に向かう。その車中で、なぜ八王子と町田を結ぶこの街道が絹の道と呼ばれるか、学生たちに説明する。 このあたりの多摩丘陵の地形地質が桑畑に向いていて、それが地域の養蚕業を盛んにしたこと。そうして絹製品の産業基盤がこのあたりにあったところに、幕末期に盛んになった生糸輸出で、山梨や長野、群馬の生糸がいったん八王子に集まり、そこから輸出港横浜まで運搬されるルートができたこと。その流通加工拠点であった八王子には富が蓄積されたし、横浜までは生糸を馬の背に乗せて運ぶにも一日では歩ききれないので、行商人たちがその中間地点の町田で一泊してお金を落としたこと。横浜で生糸を売り捌いて懐が暖まった行商人たちが、おそらく帰路についた一泊目の町田で羽根を伸ばしたので町田には町の規模の割り

    『国道16号線 「日本」を創った道』 - HONZ
  • 検索結果: author/吉森 保 - HONZ

    マレーシア出身医師の一代記『逆転力、激らせろ』が面白い!(の雑誌2024年1月 鏡てんてこ舞い号)

    検索結果: author/吉森 保 - HONZ
  • 医学界の「怪物」、その壮絶なドラマ『ゴッドドクター 徳田虎雄』 - HONZ

    徳田虎雄。その名を聞いたとき、どのようなイメージが思い浮かぶだろう。医療に風穴をあけた風雲児、潤沢な資金をバックにした金権政治家、あるいは、難病・筋萎縮性側索硬化症(ALS)と闘う患者だろうか。それは世代や立場によって大きく異なってくるに違いない。いや、そもそも若い人には、その名さえ知られていないかもしれない。 まったくの徒手空拳から、昭和48年、大阪の松原市に建設した徳田病院を皮切りに、徳洲会病院を全国に開院。「徳洲会事件」によりすでに経営者の座を追われたといえ、71の病院と約3万人の職員を擁し、グループ全体で4,200億円もの売上げを誇る、日最大にして世界屈指の病院グループの礎を築いたのが徳田虎雄だ。 その一代記であるこの、面白くないはずがない。まずは冒頭のシーンで度肝を抜かれる。医療界の話のはずなのに、山口組傘下のヤクザ-警察がいうところの暴力団-の「事始め」の儀式から始まるのだ

    医学界の「怪物」、その壮絶なドラマ『ゴッドドクター 徳田虎雄』 - HONZ
  • 『恐竜の世界史──負け犬が覇者となり、絶滅するまで』 失われた世界の新たな歴史 - HONZ

    そこに描かれている恐竜の姿に圧倒されつつ、胸をワクワクさせてページを繰った子どもの頃。そのワクワク感を思い起こさせてくれるような快著である。 2010年代に描かれる恐竜は、かつてわたしたちが見聞きした恐竜とはまるで異なっている。というのも、恐竜にまつわる研究がこの20年ほどで著しく進展し、恐竜のイメージが大きく書き換えられたからだ。驚くなかれ、たとえば新種の恐竜は、平均して週に一度のペースで発見されているのだという。書は、そうした研究の進展を背景にして、気鋭の若手研究者が新たな視点から「恐竜の世界史」を再現しようとしたものである。 よく知られているように、恐竜は三畳紀、ジュラ紀、白亜紀といった地質年代を生きていた。だがじつは、従来のイメージとは異なり、恐竜はすぐさま生物界の覇者にのしあがったわけではない。三畳紀(とくにそのうちの2億3000万年前~2億100万年前)の恐竜は、それほど大型

    『恐竜の世界史──負け犬が覇者となり、絶滅するまで』 失われた世界の新たな歴史 - HONZ
  • 『真実の終わり』米国きっての書評家が警告する民主主義の危機 - HONZ

    ミチコ・カクタニをご存じだろうか。を愛する者にとって彼女はまさに「雲の上の人」だ。1955年生まれの日系米国人2世で、ニューヨーク・タイムズ紙で34年間にわたり書評を担当した。辛口の書評で知られ、98年にはピューリッツァー賞(批評部門)も受賞している。英語圏で最も影響力のある書評家だ。 書は、彼女が2017年に会社を退職して初めて世に問うた著作である。意外なことにそれは文芸批評ではなかった。トランプ政権の誕生以後、民主主義が危機に瀕する米国社会を鋭く分析した渾身の一冊だったのだ。 トランプ大統領の登場をきっかけに世界は明らかに変わった。フェイクニュースやプロパガンダがはびこり、真実を追究する姿勢はないがしろにされるようになった。ヘイトスピーチが主流化し、人々は異なる政治的立場を超えて対話する術を見失ってしまった。なぜこのような事態が引き起こされたのか。なぜ真実や理性は絶滅危惧種となって

    『真実の終わり』米国きっての書評家が警告する民主主義の危機 - HONZ
  • 『ブロックチェーン、AIで先を行くエストニアで見つけた つまらなくない未来』ドヤ顔で行ったら、浦島太郎だった - HONZ

    『ブロックチェーン、AIで先を行くエストニアで見つけた つまらなくない未来』ドヤ顔で行ったら、浦島太郎だった 表紙に、Mistletoeファウンダーで書を監修している孫泰蔵氏の、「ドヤ顔でエストニアに行ったら、浦島太郎だった」という言葉があるが、書の内容を思いきり短くまとめれば、そういうことだと思う。 日と同じような課題を抱えながら、ブロックチェーン技術を活用して、ほぼ100%の電子政府を実現し、ユニコーンと呼ばれる評価額10億ドル以上のベンチャー企業を次々と排出するエストニアに比べれば、今や日全体が浦島太郎状態なのである。 先日のJIC(産業革新投資機構)の取締役退陣劇や日産会長の逮捕劇に見られるように、もはや日は資主義のゲームでは周回遅れの国である。それでは、それに代わる新しい社会像を提示できているかと言えばそれもない。 シンガポール、イスラエル、中国の深センなど、世界では

    『ブロックチェーン、AIで先を行くエストニアで見つけた つまらなくない未来』ドヤ顔で行ったら、浦島太郎だった - HONZ
    a1ot
    a1ot 2018/12/31
    “エストニア政府元高官は、「日本は『マイナンバー』ではなく『ユアナンバー』ではないか」と指摘。「政府が国民の情報をコントロールしたいがための制度であり、国民にとって利便性のある制度になっていない”
  • 医師にも患者にもバイアスだらけ 『医療現場の行動経済学』 - HONZ

    京都大学の庶佑特別教授のノーベル医学生理学賞受賞が決まり、日中が湧いている。この素晴らしい快挙の一方で、医療現場では混乱も生じているようだ。がん治療の現場で、医師が手術を選択したにも関わらず、患者側からオプジーボを使用したいと相談があるようなのだ。なぜ、患者側はそう考えるのか。書は、その「なぜ」に答えるである。 当然のことだが、医師はオプジーボの存在は知りつつ手術を選択している。冷静に考えれば、患者もそれはわかるだろう。しかし、生きるか死ぬかの瀬戸際で、毎日のように「オプジーボで命を救われました」という報道を目にしている患者の気持ちもわかるような気がする。 このような医療現場の意思決定について、現在の医療ではインフォームドコンセント(説明と合意)という手法が一般的にとられている。しかし、情報さえ提供すれば、患者は合理的な判断をできるのだろうか。書の執筆チームは、ここに昨年ノーベル

    医師にも患者にもバイアスだらけ 『医療現場の行動経済学』 - HONZ
    a1ot
    a1ot 2018/10/10
  • 社会分断による英国の『チャヴ 弱者を敵視する社会』は日本の近未来かもしれない - HONZ

    『チャヴ』、聞き慣れない言葉である。もとはロマ族の「子供」を指す言葉「チャヴィ」から来た、英国において用いられる「粗野な下流階級」を指す蔑称である。いくつかの英語辞典を調べてみると、「生意気で粗野な態度によって類型化される若年下流階級(オクスフォード英語辞典)」、「教養の欠如や下流階級であることを、その衣服や話し方、行動があらわすような人を示す蔑称。通常は若者を指す。(ケンブリッジ英語辞典)」、「たとえ高価であっても、その趣味が低俗であるとされる若い労働者階級(コービルド英語辞典)」などとある。 さんざんな物言いである。しかし、これらの定義を全部あわせても、チャヴという言葉を正しく理解するには足りないようだ。そこには「公営住宅に住んで暴力的」、「中流階級の謙虚さや上品さがなく、悪趣味で品のないことにばかり金を使う浪費家」、さらには、「暴力、怠惰、十代での妊娠、人種差別、アルコール依存」とい

    社会分断による英国の『チャヴ 弱者を敵視する社会』は日本の近未来かもしれない - HONZ
    a1ot
    a1ot 2017/09/15
  • 【映画】『ヤクザと憲法』極道たりとも、法の下に平等なのか? - HONZ

    昨年の山口組分裂騒動を受け、多くのメディアを賑わせた極道の世界。その一方で、ヤクザの総数は今や全国で6万人を切ったとも言われる。もはや絶滅危惧種とも言われ、岐路に立たされるヤクザ達だが、その実態はどのようになっているのだろうか? 報道やフィクションでは目にすることの多いヤクザの世界を、地上波のドキュメンタリーという形で映し出したのが、作『ヤクザと憲法』である。昨年3月に東海テレビで放送されたこの番組は、取材クルーが100日近く密着することでヤクザの日常を描き出した。現在、テレビでは未公開となったカットも追加したものが映画版として再編集されており、いくつかの劇場で見ることができる。 取材を受けたのは、大阪にある指定暴力団「二代目東組二代目清勇会」である。27人の組員を束ねる親分は川口 和秀・会長。「暴力団対策法」制定のきっかけとなった「キャッツアイ事件」の際に殺人容疑などで逮捕されており、

    【映画】『ヤクザと憲法』極道たりとも、法の下に平等なのか? - HONZ
    a1ot
    a1ot 2017/06/20
  • 『最後の資本主義』資本主義を脅かしているのは、信用の弱体化である - HONZ

    作者:ロバート・B. ライシュ 翻訳:雨宮 寛 出版社:東洋経済新報社 発売日:2016-12-02 去る12月2日に日財団で行われた「Bコーポレーションを知る会」に出席してきた。Bコーポレーションという言葉は聞き慣れないかも知れないが、アメリカの非営利団体B Labが運営する、社会的責任や持続可能性などを評価する認証制度で、「TransFair」がフェアトレード・コーヒーを認証するのと同じように、アカウンタビリティや透明性などB Labの掲げる基準を満たした企業に対して与えられる民間認証である。 「B」は「Benefit」(ベネフィット=利益)のことであり、環境、コミュニティ、従業員などの様々なステークホルダーの利益を意味している。アウトドア用品のパタゴニアを始め、現在までに世界50カ国で、約2千社が取得している。日にはまだBコーポレーションのような認証制度は見られないが、日でもB

    『最後の資本主義』資本主義を脅かしているのは、信用の弱体化である - HONZ
    a1ot
    a1ot 2016/12/18
    “職場や居住地、趣味や信条に応じて、複数のグループに所属し社会や政治と交渉を重ねていく多元主義こそが、国の活気の源泉。そのチェック・アンド・バランスによって資本主義を維持管理。それを支える拮抗勢力”
  • 長崎から世界を侵略『Moving Plants』 - HONZ

    書は、シーボルトが長崎滞在の土産として持ち帰り、今やヨーロッパなどで侵略植物の代名詞となっている「イタドリ」という日の在来植物の数奇で皮肉な運命を、10年の歳月をかけてまとめた異色の写真集である。このを手にとるまで私は、この植物の存在も、それが世界に広がった経緯も、その忌まわしい現状も知らなかった。イタドリ。どこにでもある雑草である。表紙のハート型の葉に見覚えはないだろうか。プロローグには、この植物に秘められた壮大な物語に気づき、著者が取材の旅に出たときの思いが綴られている。 イタドリは日ではごく普通に見られる雑草だが、19世紀に欧米諸国に渡り、その地で大繁殖しているという。春先3メートルの高さに成長して日光を遮ってしまうため、在来種の生育を阻害し、生態系を破壊する厄介ものであるらしい。この話を聞いて以来、私はいくつもの疑問に取り憑かれている。イタドリは異国の風景の中でどんな表情を

    長崎から世界を侵略『Moving Plants』 - HONZ
  • 人間らしさあふれる伝記 『ムハンマド─世界を変えた預言者の生涯』 - HONZ

    ムハンマド、あまりに人間らしさにあふれているではないか。といえば、不謹慎になるのだろうか。抜群に面白い伝記であった。イスラームの開祖、より正しくは、アラブにおける唯一神アッラーの言葉をつたえた預言者ムハンマドの伝記である。その啓示は、クルアーン(コーラン)としてムハンマドの死後20年たって公式に編纂され、聖典となった。いかにたくさんの人が、クルアーンの朗読に圧倒されてイスラームに改宗していったかに驚かされる。 クルアーンの内容の一部が紹介されているが、どこがそんなにすばらしいのかがわからない。当時のアラビア半島における社会状況もあるのだろうが、どうやら、それ以上にクルアーンの美しい響きが重要らしい。だから、クルアーンはアラビア語でないとダメなのだ。YouTubeで聞いてみると、意味がわからなくとも心地よい。砂漠のような環境で、美しい調べにのって語られる、住みよい社会を目指す教えというのは、

    人間らしさあふれる伝記 『ムハンマド─世界を変えた預言者の生涯』 - HONZ
  • 『スペキュラティヴ・デザイン 問題解決から、問題提起へ。—未来を思索するためにデザインができること』起こりそう、起こってもおかしくない、起こりうる - HONZ

    書は摑みどころがない。何が新しいか、面白いのかと問われたときに、答えに窮する漠然としただ。スペキュラティヴという言葉にヒントがあるだろうかと辞書を引けば、思索的、思弁的、投機的といった意味がある。しかし、どの言葉を当てはめてもしっくりとは来ない。しかし、それでも不思議と紹介したくなる魅力を持っている。スペキュラティヴ・デザインという聞き慣れない言葉の捉えられなさ自体がその魅力となっていると思う。 どうして、スペキュラティヴ・デザインは掴みどころがないかといえば、自らをわかりやすく定義し、定義されることを拒んでいるからだ。単一の価値観に異を唱え、自らも単一化したイメージとして理解されることを拒否する。厄介な問題に対する「ソリューション」ではなく、物事の可能性を思索するための手段として用いる。想像力を駆使して、新しい見方を切り開くことに重きをおいている。 そこで一つ疑問が湧く。スペキュラテ

    『スペキュラティヴ・デザイン 問題解決から、問題提起へ。—未来を思索するためにデザインができること』起こりそう、起こってもおかしくない、起こりうる - HONZ
    a1ot
    a1ot 2016/02/27
    「冒険のないアイデアは、人々の心に残らないし、常識に疑問を投げかけることもない。あまりにも奇抜すぎると芸術で片付けられてしまうし、あまりにもふつうすぎると難なく受け入れられてしまう
  • 『サイロ・エフェクト 高度専門化社会の罠』Why? Japanese People! - HONZ

    ビジネスのことであれ、社会全体のことであれ、誰だって正しい方向へ努力したいと思っているはずだ。だがその努力は果たして全体最適へと向かっているのか、それとも部分最適に過ぎないのか。分からぬところに問題がある。 判別を難しくさせているのは、多くの人がいとも簡単に専門領域にとらわれ、視野の狭い状態へ陥ってしまうためだ。先の金融危機など、その顕著な例と言えるだろう。誰もが知らぬ間のうちに、ちっぽけな専門家集団、社会集団、チームやグループの中へ閉じ込められてしまう状態ーー著者はそれを「サイロ」と呼ぶ。 大企業病、組織の硬直化、派閥争い、セクショナリズム、官僚主義…。いわば企業における失敗の要因として語り尽くされたかのように思えるテーマに新たな風を吹き込んでいるのは、文化人類学の視点である。著者は、かつてタジク人の風習をフィールドワークした時の経験に基づき、その対象を特定の企業や金融機関、そして学問

    『サイロ・エフェクト 高度専門化社会の罠』Why? Japanese People! - HONZ
    a1ot
    a1ot 2016/02/24
    「世界は効率化を追求しすぎて、かえって機能しなくなった。必然として訪れたサイロの可視化・変革が必要。あまりにも当たり前の分類、しかも語られないほど身体化された慣習に気付くことができるのはアウトサイダー
  • 『たのしいプロパガンダ』 大衆煽動は娯楽の顔をしてやってくる - HONZ

    タイトルに違和感を持つ人は多いかもしれない。政治宣伝を意味する「プロパガンダ」と聞けば、権力者を讃える映像や音楽を嫌々に観たり聞いたりする印象が強い。そして、その映像は退屈きわまりなく、楽しいわけがないからだ。 書を読めばその考えは一変する。ナチスはもちろん、欧米や東アジア、そして日でかつて展開されたプロパガンダの実例が豊富に並ぶが、「プロパガンダの多くは楽しさを目指してきた」と著者は語る。銃を突きつけるよりも、エンタメ作品の中に政治的メッセージを紛れ込ませ、知らず知らずのうちに特定の方向へ誘導することこそ効果的だろうと指摘されれば、確かにその通りだ。 中でも、「プロバガンダの達人」として紹介されるのが、北朝鮮の故・金正日。北朝鮮と言えば、将軍様を讃える映画や個人崇拝の歌の数々が頭に浮かぶ。「どこが達人なんだ!」と叫びたくもなるだろうが、金正日の発言からは意外にも硬軟交えて人民を操縦し

    『たのしいプロパガンダ』 大衆煽動は娯楽の顔をしてやってくる - HONZ
    a1ot
    a1ot 2016/02/20
    「大多数の民衆が不平不満を持ったときに、プロパガンダは想像以上の速さで浸透する。そこには必ず民間企業の存在が見え隠れする。権力側の思惑を忖度し、企業が自ら進んでプロパガンダを山のようにつくってきた歴史
  • 『兵士は戦場で何を見たのか』 - HONZ

    2007年4月、ワシントン・ポスト紙の元記者でピュリツァー賞受賞者デイヴィッド・フィンケルは、バグダッド東部にあるラスタミヤという、だれも行きたがらないアメリカ軍前線基地に赴いた。そこは、「すべてが土色で、悪臭に覆われ」、「風が東から吹けば汚水の臭いがし、西から吹けばゴミを焼く臭いがし」、「外に出るとたちまち頭からブーツまで埃まみれになる」場所だった。 2007年1月にブッシュ大統領が、「バグダッドの治安維持とイラクの自由のために」さらに2万人の兵士をイラクに送ると発表したのを受け、カンザス州フォート・ライリーを拠点にしていた第一歩兵師団第四歩兵旅団第十六歩兵連隊第二大隊がイラクに派遣されることになった。フィンケルが赴いたのは、この大隊に密着取材し、大隊の指揮官のラルフ・カウズラリッチ中佐を中心に、戦場における兵士たちの実情をレポートするためだった。 そして書(原題「The Good S

    『兵士は戦場で何を見たのか』 - HONZ
    a1ot
    a1ot 2016/02/11
    「兵士たちにとって戦争は、英雄を生み、悲劇をもたらす現場であったが、アメリカ合衆国では違った。アメリカでは、もっと戦略的で、もっと政治的で、もっと政策主導で、さまざまな用途に使える事件しか取りあげない
  • 『「全世界史」講義 教養に効く! 人類5000年史』 学びを超えた知的エンターテインメント - HONZ

    のっけから著者に反論申し上げたいことがある。出口さんは「まえがき」で、「積み重ねられた歴史を学んで初めて、僕たちは立派な時代をつくれるのではないか」という。つまり書は良き未来を創りあげるという目的のために、テキストとして読むことができると言っているように聞こえるのだ。 たしかに歴史から学ぶべきこと、いや書から学べることはあまりにも多い。それは歴史だけでなく、生き様や人間関係、組織経営に至るまで、読んでいて気付かされることが多いのに驚くばかりだ。 しかし、書は時代をつくるという崇高な目的のためだけのものではないように思われるのだ。いやそれ以上に、純粋に読む愉悦に浸ることができるだと断言できる。これからの時代を考えることはひとまず脇に置いて、早く次のページを開きたいと思わせる書は高度に知的なエンターテインメントでもあるのだ。 書を読むときのイメージは「人類5000年史」という名

    『「全世界史」講義 教養に効く! 人類5000年史』 学びを超えた知的エンターテインメント - HONZ
    a1ot
    a1ot 2016/01/26
    「国家独自の異端審問制を確立したスペインの偏狭なイデオロギーが、スペインの経済を破壊したのです
  • 『アメリカの真の支配者 コーク一族』 石油から思想までを操る華麗過ぎる一族 - HONZ

    世界最強国家アメリカで、最も影響力を持つのはどの一族だろう。20数年間で2人の大統領を輩出し、さらに3人目の大統領候補を送り出そうとしているブッシュ家だろうか。世界最大の石油企業スタンダード・オイルに始まり、金融や軍事関連企業を次々と傘下におさめ、政界にも強いコネクションを持つロックフェラー家だろうか。 夫婦で大統領となる可能性の出てきたクリントン家や世界一の大富豪として慈善活動を強力に推進しているビル・ゲイツなど、大きな力を持つアメリカ人の名前は数多く思い浮かぶ。ところが、左派系メディア『マザー・ジョーンズ』誌シニア・エディターである書の著者は、Wikipediaの日語版にも個別記事がなく、日ではその名を知る人の少ないコーク四兄弟こそが、「現在のアメリカにおいて、最も影響力を持ち、強力で、人々の耳目を集め、嫌われている人たち」であるという。 コーク一族が所有・経営する非上場企業のコ

    『アメリカの真の支配者 コーク一族』 石油から思想までを操る華麗過ぎる一族 - HONZ
  • 『動くものはすべて殺せ アメリカ兵はベトナムで何をしたか』 - HONZ

    ベトナム戦争終結から、今年でちょうど40年。その間、この戦争について多くの研究書や回顧録、ルポルタージュが刊行され、映画もたくさん制作されてきた。もちろん、これを主題とする小説も書かれた。わたし自身も何度かベトナム帰還兵の登場する作品を訳し、この戦争について学ぶ機会を得ている。英日翻訳を専門とする出版翻訳家なら、誰もが一度は向き合わざるをえないテーマかもしれない。 最近はベトナム戦争についてよく知らない若い人が増えていると聞くが、安全保障問題への関心が高まるなか、年配の世代でも、祖国の今後を考えるためにもいま一度、この戦争について知識を整理し直したいとお考えのかたもいらっしゃるだろう。きちんと知るには、フランス、そして日による植民地支配からベトナムの歴史をおさらいすべきだろうが、そんなふうに身構えずとも、ふと目を惹かれたを手にとってみることで、思わぬ興味が広がり、理解が深まることもある

    『動くものはすべて殺せ アメリカ兵はベトナムで何をしたか』 - HONZ
    a1ot
    a1ot 2015/10/28
    「米軍は広島級原子爆弾の数百倍に匹敵する破壊力でベトナムを攻撃した。日本もかつてこの地を占領し、何万人もの民間人に苦難を強いた
  • 残念ながら、日本人の8割にこのビジネス書はいらない『異文化理解力』 - HONZ

    まずは下の写真を見て欲しい。これは「人物を撮る」ように言われた二人の被験者が撮影した写真だ。撮影した二人のうち、一人はアメリカ人、もう一人は日人である。どちらの写真がどちらによって撮られたものか、お分かりだろうか。 多くの人が正解を予想できたのではないかと思うが、左がアメリカ人、右が日人によって撮影された写真である。複数の被験者に対して行われたこの実験において、アメリカ人はほとんどの場合、人物の顔がはっきり分かるようにクローズアップ写真を撮った一方で、日人は背景まで写るように撮影し、人物が非常に小さくなる傾向にあることがわかった。 西洋の実験参加者「だけど人物の写真を撮れと言われたんだから、左のこそが人物写真だよ。右の写真は部屋の写真だ。どうして日人は人物の写真を撮れと言われて部屋の写真を撮るんだ?」 アジアの実験参加者「左の写真は人物写真とは言えない。顔のクローズアップ写真だ。こ

    残念ながら、日本人の8割にこのビジネス書はいらない『異文化理解力』 - HONZ
    a1ot
    a1ot 2015/10/07
    「多様性の高いアメリカにおいては、異文化を敏感に察知して空気を読む能力を身につけなければならない。外国語については音声通訳などの技術がいつか補ってくれるかも知れないが、異文化理解力はそうはいかない