三重県教育委員会の国語の先生が集まって組織している三重県高等学校国語科研究会さんから紀行文学の魅力をたくさん本を紹介しながら語ってくださいとご依頼いただきました。おれでいいのか?感はあったのですが、会の責任者の方が、ずっと前にブルース・チャトウィンについて書いた拙論を呼んで、声をかけてくださったみたいです。ありがとうございます。当日、講演した内容を転載します。 1、紀行文学とは何か さて、今日は「辺境は、いま、どこにあるのか ―― Google時代の紀行文学」という題でお話をしたいと思います。今回、僕がこの研究会に呼ばれたのは、みなさんが以前、僕がある場所で書いたブルース・チャトウィン論「虚構と紀行のはざまで」をたまたま見つけ、読んでくださったからだとうかがいました。そこで僕は、ブルース・チャトウィンの『パタゴニア』が紀行文学として特異であり、同時代の文学のなかでも傑出した作品であるのは、
