今年のプロ野球も大詰めが近づいてきた。村上春樹はかなり熱心なヤクルト・スワローズのファンとして知られている。そこには、村上文学の本質ともかかわる意外に深い理由があるように思える。 文学者のひいきの球団というのは興味深い。吉本隆明(思想家・詩人)は阪神、丸谷才一(作家)は横浜、江藤淳(文芸評論家)は中日。こじつけになるかもしれないが、それぞれの仕事を想起させる面もないではない。 ファンクラブの名誉会員 村上春樹がスワローズのファンであることは、スワローズの公式サイトを見ればわかる。村上は3人しかいないファンクラブの名誉会員なのだ(あとの2人は出川哲朗と、さだまさし)。村上はこのサイトに7回にわたってメッセージを寄せている。 村上が小説を書き始めたことについても、スワローズが関係しているのは有名な話だ。エッセー集「走ることについて語るときに僕の語ること」(文芸春秋)ではこんなふうに記している。