おいしいラーメンとは一体何なのか。最近、ラーメンのことばかり考えている。 僕の生まれた広島県東部では、ラーメンといえば尾道ラーメンである。鶏ガラでとった澄んだ醤油スープに豚の背脂が浮かび、麺は中細のストレートというのが基本だ。「尾道ラーメン」という呼び名は最近になって広まったもので、地元では一般的に中華そばと呼ばれていて、どこのお店に行ってもたいていこのスタイルのラーメンが提供されている。価格も安く、いわば庶民のソウルフードといったところだろうか。僕にとってのラーメンとは、まさにこのいわゆる尾道ラーメンであってそれ以上でもそれ以下でもないはずだった。 そんな僕が15年ほど前に彦根にやって来たときに驚いたのが、ラーメン店が少ないということだった。そして、このあたりでラーメンといえば敦賀で、みんな口を揃えたように「敦賀にラーメン食べに行こう」と言った。確かに50キロ以上も離れた隣の県にわざわざ