本書は、海外における日本アニメ研究の第一人者による「宮崎駿論」決定版とも言うべき一冊である(原書はMiyazakiworld: A Life in Art, Yale University Press, 2018)。通読してまず実感するのは、著者スーザン・ネイピアの「ミヤザキワールド」に対する並々ならぬ愛情の深さだ。自身も優れたストーリーテラーであるネイピアの語り口は優しく滑らかで、宮崎の人生や時代背景が創作過程にどのような影響を与えたのかを、難解な専門用語に頼ることなく紐解いていく。ネイピアは、宮崎の作品世界を読み解くために、監督に関する膨大な日本語の(そして日に日にボリュームを増す英語の)文献や資料を渉猟しただけでなく、作品にインスピレーションを与えた自然や場所にも自ら足を運んで観察している。 現在、タフツ大学で修辞学教授を務めるネイピアは、これまで日本文学とファンタジーやアニメに関す