2021年3月23日のことだ。ビル・フアン被告が最高経営責任者(CEO)を務めるファミリーオフィス、アルケゴス・キャピタル・マネジメントの内部は、パニックに陥り始めていた。 27日公開された起訴状によれば、「これらの取引の支払いを今日中にできるだろうか。どうしたらいいか分からない」と次席が話したという。 フアン被告がひそかに積み上げた1600億ドル(現在の為替レートで約20兆円)相当という驚くべき株式ポジションが、一気に破綻しようとしていた。ウォール街は何が起きようとしているか全く分かっていなかった。 アルケゴスのポジション破綻は、野村ホールディングスやクレディ・スイス・グループ、モルガン・スタンレーに多額の損失を生じさせ、グローバル金融に衝撃を与えた。