だれしも死ぬときはあまり苦しまず、人生に満足を感じながら、安らかな心持ちで最期を迎えたいと思っているのではないでしょうか。 私は医師として、多くの患者さんの最期に接する中で、人工呼吸器や透析器で無理やり生かされ、チューブだらけになって、あちこちから出血しながら、悲惨な最期を迎えた人を、少なからず見ました。 望ましい最期を迎える人と、好ましくない亡くなり方をする人のちがいは、どこにあるのでしょう。 *本記事は、久坂部羊『人はどう死ぬのか』(講談社現代新書)を抜粋、編集したものです。 思いがけないことが起こる本番の死 人の死は千差万別で、予測のつかないことが起こることも少なくありません。 いや、人の死ばかりでなく、動物の死でも同じです。私も動物の安楽死で、思いもかけない状況を体験しました。 三十代のはじめに外科医として勤務していた病院で、技師さんの研修にウサギの解剖を実演することになったときの