潮匡人『日本人として読んでおきたい保守の名著』(PHP新書、2011年) カバー見返しの内容紹介にかうある。 「ネット保守」という言葉に代表されるように、若い世代で「保守」を自認する人が増えている。しかし、保守層にも日米・日中の外交関係から、TPP参加問題まで、意見が分かれることはしばしばである。では、そもそも保守とは何か? そもそも保守とは何か? 興味深い問ひかけだ。ところがこの本には、その問ひかけへの納得ゆく囘答がない。それは著者自身、保守主義についての理解が混亂してゐるからだと思はれる。 著者潮氏は「まえがき」で、オークショットの言葉を借りて保守の定義を述べる。「保守的であるとは、見知らぬものよりも慣れ親しんだものを好むこと、試みられたことのないものよりも試みられたものを〔略〕好むことである」(3頁)。この定義に素直にしたがへば、「見知らぬ」規制緩和や構造改革は保守の精神に反するだら