原発再稼働に向けた原子力規制委員会の審査に対応するための電力会社の業務について、厚生労働省が「公益上の必要により集中的な作業が必要」として、労働基準法で定めた残業時間制限の大部分を適用しないとする通達を出していたことが8日、分かった。従来、公益性を理由にした適用除外はごく一部でしか認められていなかった。専門家は「再稼働対応は営利目的で公益性や緊急性があるとは言えない」と指摘。「政府が『働き方改革』を進める中で、厚労省の見識が問われる」と疑問視している。
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鹿児島県の三反園(みたぞの)訓(さとし)知事は7日、福岡市の九州電力本店隣のビルで瓜生(うりう)道明社長に会い、川内原発(鹿児島県薩摩川内市)を直ちに停止して再点検するよう改めて求める再要請書を手渡した。九電は週内にも回答する意向だが、即時停止に応じない方針は変えない。 三反園知事は8月26日に川内原発を直ちに停止するよう要請したが、九電は10月以降の定期検査入りまで稼働を続け、定期検査と別に追加の「特別点検」を実施する方針を今月5日に回答していた。再要請書では、九電が停止要請を拒んだことを「極めて遺憾」と批判。即時停止を重ねて求めるとともに、避難道路の整備や避難支援のための車両の追加など住民の安全対策の上積みを求めた。 三反園知事は「できるだけ早く停止して検証していただきたい。県民の安全を守るため、ぜひご英断を」と話し、瓜生社長は「真摯(しんし)に検討したい」と応じた。 再要請への対応に
高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県)で、日本原子力研究開発機構が必要な機器の分解点検を2カ月間放置していたことが明らかになった。計画では3月末までに点検することになっていたが、5月末まで気付かなかったという。原子力機構の管理システムでも未点検を知らせる警報が表示されていたが、見過ごしていた。原子力規制委員会は保安検査で対応を確認する。 規制委によると、点検していなかったのは、原子炉の冷却材であるナトリウムの温度を管理する機器の一部。3月末までに点検する計画だったのに、実施していなかった。5月末に点検計画を再確認した際に気付いた。原子力機構は「職員がなぜ警報の表示を見過ごしたのか確認している」という。 もんじゅでは、2012年に1万点を超える機器の未点検が発覚。規制委は昨年11月、原子力機構には安全に運営する能力がないと判断。勧告を受けた文部科学省が、別の運営主体を検討している。
馳浩文部科学相は20日、朝日新聞のインタビューに応じ、原子力規制委員会から見直し勧告を受けた高速増殖原型炉「もんじゅ」について「廃炉という選択肢は現段階でまったくない」と述べた。馳氏は「動かすことが前提」とも語り、勧告に従って運営主体を変更し、研究計画通り発電と高レベル廃棄物に含まれる放射性物質の半減期を短くする研究に取り組む施設として維持する考えを示した。 新主体の選定状況を馳氏は「経産省や外務省、官邸などとの調整が必要だが、今がどの段階かは言えない」として明言を避けた。公表時期も「一日も早く発表したい」とする一方、「(政府内の調整が)まだ最終的に進んでいない」と語り、今後一定の期間が必要との認識を示した。馳氏は「非常につらいところ。政府の一員としてベストな選択をしなければいけない」と語った。 規制委への報告にあたっては、「文科省の立場だけで整えばよい、という姿勢は避けた方がいい」とも語
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環境省非公開会合 「ダブルスタンダード(二重基準)としか読めない」。東京電力福島第1原発事故に伴う除染で出た汚染土の再利用を巡り、管理期間を170年と試算しながらその可否について判断を先送りした環境省の非公開会合は、法令が定める二つの基準の整合性が議論の中心となった。議論を取り仕切る委員長からは「この会合はその(二重基準と言われない)準備のための理論武装と考えている」との発言も飛び出した。【日野行介】 原子炉等規制法は原発解体で生じる金属などの「安全に再利用できる基準」(クリアランスレベル)を放射性セシウム1キロ当たり100ベクレル以下と規定。一方、原発事故後に成立した放射性物質汚染対処特別措置法は8000ベクレル超を指定廃棄物とし、同ベクレル以下を「問題なく廃棄処理できる基準」と定めている。
運転開始から40年が経過した、福井県にある高浜原子力発電所1号機と2号機について、原子力規制委員会は、最長20年の運転の延長を全会一致で認めました。原発事故後に導入された運転期間を原則40年に制限する制度の下で延長が認められるのは初めてです。 20日の会合では、許認可で残されていた施設の劣化状況を評価する「運転期間延長認可」について議論が行われ、一部の配管が劣化して薄くなると耐震基準を下回るため、補強工事を行うことなどが報告されました。こうした対応を含め、委員から異論は出ず、最長20年の延長を全会一致で認めました。 これで高浜原発1号機と2号機は、期限とされている来月7日の前に必要な許認可がすべて得られ、最長の運転期間は、1号機が2034年11月まで、2号機が2035年11月までとなります。 福島第一原発の事故のあと導入された運転期間を原則40年に制限する制度の下で延長が認められるのは初め
風化のスパイラルに陥っている 7月10日に行われる参議院選挙。民意を問う貴重な機会だが、そこで争点から外されようとしている重要なテーマがある。 今回の選挙で国民が重視する政策分野は何か。6月6日の朝日新聞デジタルでは、参院選で重視する政策を選択肢から2つ選ぶ世論調査の結果を報じた。 答えには、「医療・年金などの社会保障」53%を筆頭に、「景気・雇用対策」45%、「子育て支援」33%、「消費税の引き上げ延期」23%と経済・生活関連分野が並んだ。市民連合などが最も重視し、野党共闘の結節点となっている「安全保障関連法」は17%、次いで「憲法」10%、「外交」9%といずれも関心度は低い。 しかし、私が驚いたのは、この調査の「結果」ではなく、「質問」のほうだ。並べられた7つの選択肢の中に、「原発政策」がない。3・11の福島の事故からわずか5年で、朝日新聞は「原発は参院選の争点ではない」と考えたのだ。
東日本大震災からの復興の一環として、福島県を新しいエネルギーづくりの拠点とする構想を検討してきた政府の会議は、福島県に世界最大規模の水素製造工場を建設し、2020年までに稼働させることなどを盛り込んだ構想の骨子をまとめました。 骨子には福島県を水素社会の実現に向けたモデルにするとして、県内に世界最大規模となる水素の製造工場を建設し、2020年までに稼働を始めることが盛り込まれました。 工場は水を電気分解する方法で、1年間に燃料電池車1万台分の年間使用量に相当する900トンの水素を作ることができる規模とし、2020年の東京オリンピック・パラリンピックで活用できるよう輸送方法なども検討するとしています。ただ、工場を建設する場所は決まっておらず、今後、地元と調整することにしています。 このほか、水素の供給設備、「水素ステーション」を重点的に整備するほか、風力発電用の送電線を増やすため、必要な設備
「本当に壁になるのか?壁じゃなくて、すだれのようなもの」 「壁になっているというのをどうやって示すのか? あるはずの効果はどこにあるのか?」 東京電力福島第1原発で汚染水を増やさないための「凍土遮水壁」が運用開始から2カ月たっても、想定通りの効果を示さない。廃炉作業を監視する原子力規制委員会は、6月2日に開かれた会合でイライラを爆発させた。 凍らない部分の周辺にセメント系の材料を入れるという東電の提案に対しても、規制委側は「さっさとやるしかない」とあきれ果てた様子。約345億円の税金を投じた凍土壁の行方はどうなってしまうのか。 会合は、冒頭からピリピリと緊迫した空気が漂っていた。 東電の担当者は2分間程度の動画を用意していた。凍土壁が凍っている証拠を視覚的にアピールするため、地中の温度の変化を動画でまとめていたのだ。 ところが、規制委の更田豊志委員長代理は「温度を見せられても意味がない。凍
原子力規制委員会が廃炉も含めた運転主体の見直しを勧告していた高速増殖炉原型炉「もんじゅ」(福井県)について、政府が存続の方針を表明することが14日、分かった。文部科学省の有識者検討会が月内にも報告書をまとめた後になる見込み。規制委が文科相に対し勧告の回答期限のめどとしていた「半年」はすでに過ぎているが、いまだ現在の日本原子力研究開発機構に代わる受け皿の具体案は出ておらず、実際の存続は不透明な状況にある。 もんじゅをめぐっては、規制委が昨年11月13日、原子力機構について「運転を安全に行う資質がない」と断定。機構に代わる運転主体を具体的に特定し、新たな受け皿が見つからない場合はもんじゅの抜本的な見直しをするよう、機構を主管する馳浩文科相に勧告した。その回答期限を「半年をめど」にしている。 もんじゅはナトリウムを冷却材に使う特殊な炉で、受け皿探しは難航。文科省は受け皿を議論する検討会(座長
福井県にある高浜原子力発電所3号機と4号機の運転の停止を命じた仮処分の決定に対し関西電力が異議を申し立てたことについて、大津地方裁判所は、住民側と関西電力の双方から法廷で意見を聞く手続きを10日の1回で終え、来月10日以降に判断を示すことになりました。 関西電力は、再稼働していた原子炉の運転を止める一方、決定の取り消しを求めて異議を申し立て、10日、同じ裁判長の下で住民側と関西電力の双方から非公開で意見を聞く手続きが行われました。 住民側の弁護団によりますと、このなかで関西電力が「仮処分の決定は、原発の安全性そのものの議論から離れ、原子力規制委員会の規制基準が妥当かどうかの立証まで事業者に求めていて、合理性を欠く」と主張して10日で法廷での手続きを終えるよう求めたのに対し、住民側は「規制基準が妥当かどうか立証を求めるのはほかの裁判でも取られてきた考え方だ」と主張したということです。 裁判所
原子力防災担当相を兼務している丸川珠代環境相は16日午前11時半からの政府の地震非常災害対策本部会議で、稼働中の九州電力川内原発(鹿児島県)について、「原子力規制委員会において停止させる必要はないと判断されている」と報告した。 丸川氏は「今回の地震で川内原発において観測された地震動は最大で12・6ガルとなっている。これに対し、原子炉運転中に自動停止させる設定値は80~260ガルに設定されている。さらに同発電所は新規制基準への適合性審査で620ガルの地震動を受けたとしても、安全上重要な機能は確保されることを確認している」と述べた。
【ワシントン=金杉貴雄】安倍晋三首相は一日午前(日本時間二日未明)、核物質や核施設の防護・管理強化を話し合う「核安全保障サミット」で演説し、東京電力福島第一原発の事故を踏まえ「日本は二度とあのような事故を起こさないとの決意の下、原子力の平和的利用を再びリードすべく歩み始めた」と原発の再稼働推進を宣言した。事故から五年を経ても収束の道筋が見えない福島第一原発の現状には言及しなかった。 首相は演説で「事故の教訓を原発を導入するすべての国と共有し、安全性や事故対策についての知見を世界に広げることが日本の使命だ」と強調。各国への支援、安全基準に関する国際協力などを積極的に行っていく考えを表明した。 福島第一原発では、現在も放射能汚染水の対策に追われる。福島県では十万人近くが避難生活を送り、放射性物質を含む汚染土を処分するめどもついていない。東電や国から十分な賠償が得られていないとして集団訴訟
今年度中に16から18基の原発で実施を目指すとしていたプルサーマル計画について、電事連=電気事業連合会は、多くの原発で再稼働の見通しが立たないとして新たな計画を示さず、プルトニウムの使いみちがはっきりしない状況が続いていて、国際的な懸念が高まることも予想されます。 プルトニウムは核兵器の原料になるため、使う目的のない量を持たないことが原則で、日本は保有状況や使用状況を毎年公表しています。しかし、すでに保有する、核兵器6000発近くに当たるおよそ47トンについて、原発事故のあと具体的な利用計画を示せない状況が続いています。 29日の会合で、原子力委員会側は「やむをえないものの、できるかぎり具体的な説明に努力するよう期待したい」としましたが、プルトニウムの使いみちがはっきりしない状況が続いていて、国際社会の懸念が高まることも予想されます。
【ワシントン=小川聡】トーマス・カントリーマン米国務次官補(国際安全保障・不拡散担当)は17日、上院外交委員会の公聴会で、原子力発電所の使用済み核燃料を再処理してプルトニウムを取り出す日本の核燃料サイクル政策や中国の同様の計画に対し、「核安全保障と不拡散にとって懸念をもたらす政策だ」と述べ、計画を停止することが望ましいとの考えを示した。 カントリーマン氏はこの中で、日中と韓国が再処理の計画を進めていることに対し、「理性的ではない形で競争が激化している。経済的にも合理性がない」と懸念を示し、「全ての国が再処理事業から撤退すれば非常に喜ばしい」と語った。 公聴会は、オバマ大統領が今月31日から2日間、50か国以上を招いて開催する核安全サミットに向けたもの。現役の米政府高官が日本の核燃料サイクル政策に疑問を呈するのは異例だ。
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