【波紋の先】ユッケ事件1年 焼き肉チェーン「焼肉酒家(さか・や)えびす」の集団食中毒事件は27日で、最初の発症者の発覚から1年を迎える。患者は富山県など4県で死者5人を含む181人。被害者やその家族たちは、真相究明や補償が進まない現状に、やるせなさや怒りを抱えている。 ◆被害者ら募る怒り 「もし『解決』までに10の工程があるとしたら、順番に一つ一つ(工程が)終わっていくと思っていた」 義母(当時70)と妻(同43)を亡くし、2人の子供が一時、集中治療室に入った砺波市の男性(49)は、現状に怒りを募らせる。 「えびす」砺波店で家族5人で食事をしたのは昨年4月の長女の誕生日だった。あの日から1年。今年の誕生日に長女は帰宅するなり「学校で友達がクラッカーを鳴らして祝ってくれた」とうれしそうに話した。元気な姿に安心すると同時に、周りの気遣いに感謝した。 一方で、長女は事件後、家の中で携
印刷 4月に発生した焼き肉チェーン「焼肉酒家(さかや)えびす」の集団食中毒で、重症化した患者が死亡する率が、これまでの腸管出血性大腸菌による食中毒の例に比べ3倍を超えていたことが富山県の調べでわかった。脳症や溶血性尿毒症症候群(HUS)を発症して重症化する傾向も強く、厚生労働省の研究班は全患者のカルテなどを分析し、原因を調べる。 えびすが提供したユッケを原因とした集団食中毒では、富山、福井、石川、神奈川の各県で181人が発症し、5人が死亡。37人の患者から腸管出血性大腸菌O(オー)111が検出された。 富山県生活衛生課によると、これまでの腸管出血性大腸菌による集団食中毒では、患者のうち腎臓の機能が低下するHUSに陥るのは10〜15%で、HUS患者の死亡率は1〜5%だった。しかし、今回は患者181人のうち32人(17.7%)がHUSを発症し、このうち15.6%に当たる5人が死亡した。特
焼き肉チェーン「焼肉酒家えびす」で4名が亡くなる集団食中毒事件が発生して2か月が過ぎた。 「えびす」の運営会社「フーズ・フォーラス」(本社・石川県金沢市)は営業継続を断念し、会社の清算を決めた。 事件直後、報道陣の前で突然土下座して謝罪し、それが「パフォーマンスだ」とさらなる批判を浴びてしまった勘坂康弘・社長(42)が2か月の沈黙を破って口を開いた。 ――この2か月はどう過ごしてきたのか。 「事故後はご遺族や被害者の方に謝罪をして回り、(今後の補償などについて)お話をうかがっている状況です。幸い、ほとんどの方が退院されたと聞いています」 ――捜査の焦点は、食中毒の原因となった腸管性出血性大腸菌O-111が、どこで付着混入したかだ。 「(仕入れ先だった食肉卸業者の)大和屋商店さんとは一度、電話で話をしただけです。その時は、“ユッケ用としてサンプルをいただきましたよね”という確認をしました。ど
焼き肉チェーン「焼肉酒家(さかや)えびす」の集団食中毒事件で、3人の死者を出した富山県の砺波(となみ)店が手袋を使わずにユッケ用の肉をカットしたり、カット後すぐに小分け作業をしていなかったりして、不衛生な仕込み作業をしていたことが、国立感染症研究所の専門家チーム(FETP)の中間報告などでわかった。 27日で発覚から2カ月を迎え、富山県警などの合同捜査本部は業務上過失致死傷事件として捜査しているが、えびすを運営するフーズ・フォーラス社(金沢市)の管理体制のずさんさの一端が明らかになった。 専門家チームのまとめなどによると、患者全体の約6割にあたる99人(死者3人含む)が発症した砺波店では、開店前の仕込みでユッケ肉をカットする際、従業員は手袋を使っていなかった。 また、他店舗では、菌の繁殖の拡大を防ぐためカット後、時間をあけずに小分け作業をしているが、砺波店では食感をそろえるため、同時
各店の肉の入荷と重症者らの来店状況食中毒事件の捜査・調査の状況 焼き肉チェーン「焼肉酒家(さかや)えびす」の集団食中毒事件で、ユッケに用いられた肉の卸業者「大和屋商店」(東京都板橋区)が4月14日に受注した肉が腸管出血性大腸菌O(オー)111に汚染されていた疑いが強いことが捜査関係者らへの取材でわかった。 富山県警などの合同捜査本部は、汚染肉の特定につながるとみて、この時期を中心に大和屋での加工や仕入れ・出荷状況を捜査している。 えびすを運営するフーズ・フォーラス(金沢市)によると、仕入れは本社が一括管理し、受注した大和屋は肉を各店に向けて発送していた。 合同捜査本部は、各店ごとに、溶血性尿毒症症候群(HUS)を発症した重症者の最も早い来店日に着目した。 死者3人が出た砺波店(富山県砺波市)では、4月21〜23日の来店客に食中毒患者が集中したが、重症者のなかで最も早い来店日は19
焼き肉チェーン「焼き肉酒家えびす」の集団食中毒事件を受け、富山市保健所は、生食用肉を提供する焼き肉店などに対し、菌がつきやすい肉の表面をそぐ「トリミング」作業をした場合でも、生肉に細菌が残っていないか自主検査するよう指導する方針を固めた。 厚生労働省は再発防止へトリミングを重視する動きを見せているが、同市は、「トリミングは万能ではない」とし、さらに厳しく対策を講じるべきと判断。週内にも始める立ち入り検査で店側に伝える。 厚労省は今月5日付の通知で、都道府県や保健所設置市に対し、生食用肉を扱う飲食店や精肉店などの施設で〈1〉トリミングなどの加工〈2〉保存〈3〉「生食用」の表示〈4〉自主検査の有無――の各項目がきちんと行われているか月内に確認し、報告するよう求めた。特にトリミングについては、温度管理や器具の専門化、手指の洗浄方法などチェックポイントを細かく列挙し、重視する内容となっている。 た
焼き肉チェーン「焼肉酒家(さかや)えびす」の集団食中毒事件で、金沢市保健所が昨年6月以降、金沢市内の5店に対し、生肉をユッケにして提供する前に、肉の表面全体を削り取る「トリミング」を行うよう指導していたことがわかった。チェーンを運営する「フーズ・フォーラス」(金沢市)は「明確な指示がなかった」として、その後も各店にトリミングを指示していなかった。 市保健所によると、昨年6〜9月、食品衛生法に基づいて金沢市内の同チェーン5店に定期検査に入った。ユッケの加工手順などを店側から聞き取り、「肉表面の皮だけでなく、肉の部分も含めて全体を削るように」と、厚生労働省の衛生基準を守るよう指導したという。 フーズ社幹部によると、本社は店が保健所から指導を受けたことは知っていたが、その後も基準を満たしたトリミングを実施するよう店に指示することはなかったという。 同社は取材に対し、卸業者「大和屋商店」(東
焼き肉チェーン店「焼肉酒家えびす」の集団食中毒事件で、同店に肉を卸していた「大和屋商店」(東京都板橋区)が、国が生食用肉の衛生基準を策定(98年)する前の94年3月、都内の小売、卸業者が加盟する都食肉事業協同組合を脱会していたことが分かった。国は業界団体を通じて衛生管理の徹底などを通知することが多く、非加盟だと指導などから漏れる可能性が高くなる。組合関係者は「経営者の意識の低さが招いた事件では」とみる。 民間調査機関によると、大和屋商店は現社長(69)の親族が1940年に創業し、86年に現社長が引き継ぐ形で設立した。年間売り上げは7億円余り(05年2月期)。組合脱会当時を知る業界関係者は「先代は業界のリーダー格で衛生管理もしっかりしていたが、現社長になってから業界での付き合いが減った」。別の業者は「『組合費を払ってもいいことはない』と言ってやめたと聞いた」という。 同組合には現在、1160
焼き肉チェーン「焼肉酒家えびす」の富山、福井両店舗で客4人が死亡した集団食中毒事件で、発症原因となったユッケに使った生肉は、東京都板橋区の食肉加工卸業者「大和屋商店」で、4月11〜16日に加工されていたことが8日、富山、福井、神奈川県警と警視庁の合同捜査本部、富山県などへの取材でわかった。 生肉は埼玉県内の食肉市場で買い付けた14頭のものであることも判明。合同捜査本部は近く同社幹部らを事情聴取し、肉の汚染源の特定を進める。 これまでの調べで、砺波(富山県砺波市)、駅南(同県高岡市)、富山山室(富山市)、福井渕(福井市)の計4店舗で4月17〜26日に来店した人がユッケを食べて食中毒を発症したことがわかっている。捜査本部は、同社からの押収資料や富山県の調査などで肉が納入されるまでの過程をたどり、同11〜16日に加工されたと判断した。 本紙が入手した同社の内部資料などによると、4月11〜16日に
フーズ社が大和屋商店から受け取ったとされるメール。肉について「歩止り約100%」と記されている処理簡略化の経緯 焼き肉チェーン「焼肉酒家(さかや)えびす」の集団食中毒事件で、運営会社「フーズ・フォーラス」(金沢市)が富山・福井両県警などの合同捜査本部の調べに対し、食肉卸会社「大和屋商店」(東京都板橋区)から「そのまま生食用に使える肉として売り込みを受けた」と説明していることが、フーズ社関係者の話でわかった。 厚生労働省の衛生基準では、生で食べる肉の場合、細菌などが付いているおそれがある表面を削り取る「トリミング」作業を食肉処理業者や飲食店に求めている。フーズ社は大和屋と取引を始めて以降、店での肉の処理を簡略化し、大和屋も保健所の調査にトリミングを否定していることから、双方で適切な処理を受けないままの肉がユッケとして客に提供されていた疑いがある。 フーズ社が捜査本部に任意提出したメール
最初の死者が出てから1週間で強制捜査に乗り出した石川、福井両県警の合同捜査本部。中野寛成国家公安委員長は6日の会見で「業務上過失致死傷罪の適用を視野に捜査に入る」と明言したが、解明しなければならない事実は多く、立件までにかなりの時間を要しそうだ。 捜査関係者によると、問題の食肉が卸売業者から客に出されるまでの扱われ方の解明が捜査の大きポイントになる。ただ、現時点でどのような形で出荷され、いつ菌に汚染されたのかという外形事実もほとんど解明されていない。 問題の肉が生食用だったか否かについては、「ユッケ用として仕入れた」とするえびす側と「生食用ではない」とする卸売業者側で「水掛け論」になっており、今後、関係者からの事情聴取などで真相の解明を図るという。 また、肉の表面をそぎ落とす「トリミング」をえびす側が行っていなかったことが食中毒の原因のひとつと指摘されている。厚生労働省の衛生基準にも盛り込
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