丸く結球する白菜が普及する昭和初期まで、日本各地で作られていた「しゃくし菜」。アブラナ科の一年草で中国が原産地で、揚子江一帯に栽培されていたものが、明治初期に日本へ伝えられたという。しゃもじの形に似ていることからその名が付いたそうだが、秩父ではこの伝統野菜を使った「しゃくし菜漬け」が作り続けられている。 起伏豊かな秩父地方は埼玉県の面積の4分の1を占める。山里で水田は少なく、昔は麦畑や桑畑が広がっていた。男は炭焼き、女は養蚕に精を出し、秩父の風土にあった野菜を育てた。しゃくし菜は結球しない白菜の仲間で漬け物用の菜っ葉として親しまれていたが、白菜が中国から伝わるとしだいに姿を消した。 しゃくし菜畑を案内してくれたのは、農家の冨田繁正さん。周囲では稲刈りが終わり、自然乾燥のためのはざ掛けが見られる。収穫したばかりのしゃくし菜がまぶしいほど白く光って見える。 「体菜の仲間で、品種名は雪白体菜(せ